【Welcome Back! Clockenflap】5年ぶり開催の香港最大級フェス「クロッケンフラップ」レポート&12月の開催参加に役立つ情報まとめ

欧米×アジアの絶妙なラインナップ

クロッケンフラップには、地元・香港のアーティストはもちろん、日本、韓国、タイ、台湾などアジア各国からのアーティストも多く出演し、そこに欧米諸国のアーティストがバランスよくミックスされる。同じインターナショナルフェスでも、フジロックやサマーソニックと比べると、自国以外のアジア各国からの出演比率が多く、アジアの新しい音楽を紹介するという意志が感じられるラインナップになっている。今年のヘッドライナーは、アークティック・モンキーズ、カーディガンズ、ウータン・クランが務め、ほかにもFKJやフェニックスなどの人気アーティストが並び、日本からもmilet、MONO、羊文学、CHAIが出演した。

フェス自体は金曜日の夕方からスタート。通常こういったフェスは、金曜日のチケットが売り切れることは珍しいが、金曜日のヘッドライナーにアークティック・モンキーズ、トリ前にフェニックスが出演するということで平日ながらチケットはソールドアウト。開場前から多くの観客が集い、入場まで数百メートルの列ができていたほど。そして初日のハイライトは、やはりアークティック・モンキーズだった。音が鳴る前から大歓声で迎えられ、恒例の2曲目「Brianstorm」で一気に会場の温度を上げると、初期の疾走感あふれる楽曲から昨今の色気のある演奏で、復活のクロッケンフラップ初夜を華々しく飾った。

土曜日は、アジア各国のアーティストの活躍が目立った。LÜCY(台湾)、HYBS(タイ)、地元香港からも、セカンドステージを沸かしたスケール感のあるロックバンドのKolorや昨年香港のサバイバル番組で誕生し人気を博したアイドルグループCOLLARが会場を盛り上げた。また日本勢も観客から熱いレスポンスがあったのも嬉しい一幕だった。この日夕方にPARK STAGEに登場したCHAIは、日本でもトップクラスの海外フェス出演経験で鍛え上げられたグルーヴを遺憾なく発揮。4人の自由かつ情熱的なパフォーマンスの熱は観客にも伝染し、ライブ終わりにはアンコールが起こるほどの盛り上がりを見せた。また、同ステージのトリ前に出演した羊文学も溢れんばかりの超満員。日本語詞が中心のバンドだが、しっかりと聴き入る人、リズムに合わせて手拍子をする人、思い思いのスタイルで彼女たちの音楽を楽しんでいる姿が印象的だった。

そしてこの日一際印象的なライブを披露してくれたのが、Ginger Root。中国系アメリカ人のキャメロン・ルーによるプロジェクトで、先月行われた初の来日公演を成功させ、今年のフジロック出演も決定しているが、なんと初のフェス出演がクロッケンフラップとのこと。日本文化からの影響を公言し、80年代の日本のテレビやポップスをモチーフにした映像も話題になっているが、独学で勉強中という日本語を香港のファンの前で披露し、YMO「君に、胸キュン。」やエヴァンゲリオンのOP曲「残酷な天使のテーゼ」のカバーを得意げに披露し、初フェスとは思えない余裕を見せつけていた。

最終日となった日曜日も、アジアのアーティストの活躍が目立った。メインステージに登場した韓国のLEENALCHI(イナルチ)は、韓国の伝統民族音楽の「パンソリ」を現代のサウンドに再構築したバンド。韓国の音楽と聞くと昨今はK-POPが頭に浮かぶが、全く違うのイメージのサウンドと韓国語の力強い発音、現代的かつミニマルなリズムが合わさった唯一無二の楽曲はまさにフェス映えする音楽そのものだった。この日の夜に登場した韓国のコレクティブBalming Tigerとともに、ポップス以外の韓国勢の勢いを感じる1日となった。またメインステージに登場したJulia Wu(ジュリア・ウー)は、台湾の人気女性R&Bシンガー。KANDYTOWNのKEIJUとのコラボシングルや向井太一との曲もリリースするなど日本のアーティストとも親交がある彼女だが、今回はルーズソックスにミニスカートという衣装で登場し、代表曲「精神分裂」、「你是不是有點動心」などを披露し、最終日の夕暮れどきを彩った。

日が暮れてからメインステージにmilet、同タイミングでセカンドステージにMONOという時間帯があり、この日も日本のアーティストが香港のファンの心を掴んでいた。来場者スナップでもmiletとMONOが目当てという現地の香港人の声もあがっていたことも彼らの現地での人気を裏付けているだろう。そして今年のクロッケンフラップ大トリを務めたのはヒップホップ界のレジェンド、ウータン・クラン。日曜22時過ぎというフェス最終日にしては遅めのスタートだったが、ヒット曲に加え、ニルヴァーナのカバーも披露。ブルース・リーヘのリスペクトをはじめ、香港への感謝を挟みつつ、惹き込み、圧巻のヒップホップ・ショーを見せつけた。45分という短い時間のパフォーマンスだったが、熱気冷めやらぬ観客からウータンコールが沸き起こり最後にはアンコールにも応え、復活のクロッケンフラップを締めくくった。

LIVE PHOTO

Text:江藤勇也
Edit:津田昌太朗
Live Photo:Official

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