―そんな「GREENROOM FESTIVAL」ですが、一番忘れられない年というと?
釜萢:2011年の震災(東日本大震災)のときは、やっぱり忘れられないかな。距離的にも遠くない場所でしたし、海外アーティストの来日は軒並みキャンセル。動員も厳しかったりして……。でも、毎年、自分自身が楽しみながら続けてこられているのはありがたいなと思います。
―震災の年といえば、サマソニはいかがでしたか?
清水:あの年もレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)がヘッドライナーだったんだよね。あともう1日はストロークスか。キャンセルされてもしょうがないなという不安はあったんだけど、実際にはほぼ全アーティストが日本まで来てくれたし、東京と大阪の会場には義援金箱も設置した(※)。微力でも復興のために役立つことができたのであれば、開催して良かったなと思うね。
※サマソニ東京&大阪事務局からの義援金と、来場者の募金を合わせた総額15,463,699円が東日本大震災への義援金として寄付された
―個人的には、2011年の「サマソニ」で見たストロークスのライヴは彼らのベスト・ライヴのひとつだったと思っています。
清水:前回(2003年)のレディオヘッドの前でやったときは、彼ら酔っ払ってたもんね(笑)。2011年のストロークスも、たしか前の年に海外でライヴを見て、あの映像とのシンクロがスゲー格好いいなと思ってオファーを決めたんですよ。
―「GREENROOM FESTIVAL」のラインナップについては、清水さんに相談されることもあるのでしょうか?
釜萢:うん、毎年かなり早い時期に相談していますね。お互いに呼びたいアーティストのリストがあるから、それを元に話し合いながらラインナップを固めています。
清水:今年はトム・ミッシュが出るけど、去年「サマソニ」のビーチ・ステージに出てもらったときも、「これ『GREENROOM』でも見れたら最高だな〜」って思ったからね。そういうイメージを持ちながら「サマソニ」のアーティストを見てる部分もある。その逆も然りで、リオン・ブリッジズなんかはずっと「サマソニ」に出したかったんだけど、なかなかタイミングが合わなかったから「GREENROOM」ならどうだろう? って打診しまして。そうやって良い関係性を築いていれば、次回は「サマソニ」にも出てくれるかもしれないしね。
釜萢:過去にクリエイティブマンさんがアヴィーチーを招聘した流れがあったから、今回(アヴィーチーの“Wake Me Up”などにも客演している)アロー・ブラックを呼べた部分もありますからね。
―リオン・ブリッジズは第61回グラミー賞で「最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス賞」を獲りましたし、ナイス・タイミングですね。それこそ、今年の「サマソニ」に出演するタッシュ・スルタナとかは「GREENROOM FESTIVAL」にもハマりそうなアーティストだと思いました。
釜萢:あのコ、めっちゃ格好いいですよね。
清水:だから、今年来てもらったときに来年の「GREENROOM」のプレゼンテーションをしておくんですよ(笑)。
釜萢:ウチも推しているアーティストです。やっぱりメルボルンって歌心のある格好いい街というか、2016年の「GREENROOM FESTIVAL」に出てくれたハイエイタス・カイヨーテもそうですけど、昔から良いバンドとアーティストが出てくる印象がありますね。ジョン・バトラー・トリオとかもオーストラリア出身ですし、お国柄なのかな。
清水:サーフ・カルチャー的にもそうだし、「GREENROOM」はオーストラリアを意識しているんだなって毎年感じるよね。
釜萢:実は、若いときオーストラリアのシドニーに1年留学してたんですよ。それで自分の中に染み込んでいるのかもしれませんね。毎日サーフィンしながら、ラジオは「Triple J」ばっかり聴いてました(笑)。
―「サマソニ」と「GREENROOM FESTIVAL」にはブレイク前のSuchmosも出演してきましたし、今年は飛ぶ鳥を落とす勢いのKing Gnuがどちらのフェスにも出演しますよね(※「サマソニ」は東京のみ)。彼らのどんなところに期待していますか?
釜萢:彼らの活躍を見ていると、変わらず10年、15年と応援していきたくなる魅力がありますよね。
清水:「サマソニ」に出る邦楽アーティストって、僕が全部ブッキングしているわけじゃないんだけど、「このアーティストは絶対に入れてね」っていう新人は毎年リクエストしていて。今年はそれがKing Gnuだったんですよ。去年ならあいみょんだったし、一昨年なら水曜日のカンパネラって感じでね。そういう「ネクスト・ブレイク枠」みたいなものはたしかにある(笑)。だからもう、絶対King Gnuには今年出てもらいたかった。
―今年は「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」にも出演が決まっているので、フェスの顔になりそうだなと思っていて。「GREENROOM FESTIVAL」ではフィッシュボーンと同じ日に出ますけど、「日米ミクスチャー対決」としても楽しめそうですよね。
釜萢:ミクスチャーという観点では、去年サブライムに出てもらってますね。毎年やっぱりアメリカ西海岸の流れみたいなものは意識しています。
清水:フィッシュボーンでどれだけお客さんが暴れるのかっていうのも見どころだよね(笑)。
―今年だったらアラーラズがいますけど、過去にもベイブ・レインボウとかザ・グラウラーズみたいなインディー好きのツボを押さえたサイケ・ロック・バンドを呼んでくれているのが嬉しいなと。
釜萢:そこはやっぱり、僕自身がカリフォルニアとかオーストラリアのレイドバックしたバンドが好きなんで、毎年1組は必ず入れるようにしています。その頂点にはテーム・インパラがいるんですけど…。
清水:彼ら、今じゃもう「インディー」じゃないからね。最初に「サマソニ」で呼んだのが2009年だったっけ? 演奏ボロボロだったもんなあ(笑)。それが「コーチェラ」のヘッドライナーになったっていうのも感慨深いよね。