―先ほど「場所に恋してる」というお話がありましたけど、フェスを続けていく上で、「環境問題」はどのくらい意識されていますか?
清水:「サマソニ」では「ビーチクリーン」という活動を毎年やっていて、100人くらいのボランティアを集めて幕張のビーチでゴミ拾いをしています。開催期間中のゴミの分別も含めて、都会のフェスでもやれることはあるんじゃないかと。日本のフェスって、その意識がお客さんにも啓蒙されているというか、それを一番最初にやってくれたのが「フジロック」だったんだよね。「フジロック」がオーディエンスの意識を変えてくれたからこそ、「会場をキレイに使おう」という共通認識がきちんと浸透している。そういう意味では感謝しかないです。
釜萢:結局、街に出たゴミが海に流れ着くわけなので、そのゴミを増やすわけにはいきませんよね。ウチは今プラカップを禁止していますし、フェス直前には鎌倉で「GREENROOM FESTIVAL BEACH CLEAN & LIVE」っていうプレパーティーもやっているんですよ。あとはフェスの前後にボランティアでゴミ拾いをしたり、海岸付近にゴミ箱を設置したり、そういった活動はずっと続けています。フェスは色んな仮設物を作って、次の日には片付けて……っていう刹那的な側面もあるので、「海にどう還元していくか?」っていうのは常に考えないといけないなって思いますね。
―「フジロック」の場合は苗場の住民を納得させるのが大変だったと聞きますけど、そういう苦労は特になかったですか?
清水:ウチの場合はもともと会場がコンベンションホールとスタジアムだから、そういう障害はなかったね(笑)。その2つを一緒に使うっていうのは今まで誰もやってこなかったからチャレンジではあったけど、回を重ねるごとにビーチやリバーサイドガーデンとエリアを広げていったことで、さらに「自然との共存」というのを強く考えるようになったとは思うな。
―「GREENROOM FESTIVAL」も地元の方々との良い関係が築けているんでしょうね。
釜萢:うん、じゃないと15年も続けられませんから。地元の飲食店とかも紹介してあげたいし、彼らって横浜とか湘南のニオイがあるというか、格好いいんですよ。そういう格好いい人たちが集まれば、自然とお客さんも付いてくるじゃないですか。
清水:良いロールモデルになったよね。あの場所であれだけの規模感のフェスができる/見せられるっていうのは。ただ、単純にそれをマネしたら上手くいくのかといったらそうじゃないし、そこはやっぱり根底にあるカルチャーをしっかり押さえているオーガナイザーがいないと成り立たないわけで。
―アートコンテナの無料エリアもあるし、あの場所にいるだけでも楽しいですよね。
清水:お金払わないで参加している人がたくさんいるもんね。赤レンガに来て、外のフリー・ライヴを見て、中からの音漏れも聴いて…っていう(笑)。まあ、チケットがソールドアウトしてるからしょうがないって部分もあるんだろうけど。
―清水さんは20年間、釜萢さんは15年間も巨大なフェスティバルのオーガナイザーとして駆け抜けてきたわけですが、もっとも印象的だった出来事は?
清水:一番というのはなかなか決められないし、良いライヴはいっぱい見てきたけれど、それ以上にオーディエンスが喜んでいる「顔」なんじゃないかな。最近では映画『ボヘミアン・ラプソディ』の影響でクイーンがこれだけのムーヴメントになっているけど、2014年の「サマソニ」に出てもらったときはここまでの社会現象になるとは思ってもみなかった。でも、やっぱりあのときのライヴは特別で、フレディ・マーキュリーの映像を見ながら号泣しているお客さんもいれば、PA横で見ていた僕に「ありがとう!」って握手を求めてくるお客さんがいたり、すごく素敵な光景が広がっていたんですよ。それは2003年にレディオヘッドが“Creep”を演奏したときもそうですし、「この仕事をやってきて良かったな」って感じる瞬間ですね。
釜萢:僕もやっぱり「顔」かもしれませんね。初開催のときに雪の中でお客さんが並んで待ってくれていて、その後のライヴでみんなが盛り上がっている笑顔を見たら、「フェスをつくること」に取り憑かれてしまった。
清水:それって何月?
釜萢:2月です(笑)。
清水:ハハハ! なるほど(笑)。それで雪は堪えるよね。
釜萢:あのときはホント「達成感」というか、お客さんが盛り上がってくれている姿に感動しちゃったんですよね。
―世界的にフェスが飽和状態にあって、次々と新しいフェスが生まれては消えていく。そんな中で、清水さんと釜萢さんはどんな部分で差別化を図っていますか?
釜萢:うーん…まあ、本物感というか、「本物」を見せてあげるということに尽きますよね。僕の趣味で言えばサーフィンとかスケートボードとか、ストリート・カルチャー的なところでちゃんと「本物」がいる。そして、その「本物」の人たちと会える場であったり、体験できる場をフェスの中でつくっていく。たとえば、ドッグタウンとかボーンズ・ブリゲードのライダーが会場に来ていたりだとか、ミュージシャンもホントの格好いい連中が出ているとかですよね。僕らが子どもの頃って、そういうペインターとか、スケーターとかに会える機会なんて皆無だったんですよ。それをちゃんと妥協せずに作り込んでいくというか、それが結果的に差別化につながっているとは言えるかもしれません。
―ポスターをよく見ると錚々たるブランドが協賛していますけど、ひとつもウソがないというか、サーフ・カルチャーとの結びつきを感じるブランドばかりですよね。フェスとしての差別化という意味で、清水さんはいかがですか?
清水:世界の他のフェスと比べていたらキリがないし、まずは「アジア」という括りで見てほしいかな。これだけの海外のアーティストが一堂に会するアジアのフェスって他にはないわけで。それも、アジアの中で言ったら日本だけだし、さらに日本国内で言ったら「フジロック」と「サマソニ」だけだと思うんですね。このレベルのものを最初から作ってこられたっていうのが差別化になっているし、今後もこれを守りきっていきたいなと。そりゃあ中身のブッキングは色々変わるけども、世界の最先端を感じられるラインナップを日本で体感できるフェスという点ではブレないと思いますね。
―来年はオリンピック・イヤーで「サマソニ」が休止ですし、他のフェスにとっても会場確保の問題などで正念場となる気がしています。今後、日本のフェス・シーンはどうなっていくとお考えですか?
清水:でも何年か続けていると、会場側が「毎年あるもの」としてキープしてくれるんですよ。周りが定例ものとして考えてくれる。それがフェスを続けていく上での大前提だよね。そういう意味でも15年、20年とやってきたら、誰もが「来年もあるんだろうな」と思ってくれるし、フェスのことばっかりを考えながら1年を過ごしているお客さんもいるわけじゃない? 僕らオーガナイザーって、実はそんなに他のことを考えている余裕はなくって……。自分のフェスをどう続けていくか。そして次にどんな展開をするべきか。そんなことを考えながらやっているんで、もう毎年アップアップですよ(笑)。
釜萢:そうですね(笑)。僕らは今年も「Local Green Festival」(「グリーン」がコンセプトの秋フェスで、「GREENROOM FESTIVAL」と同じく横浜赤レンガ地区野外特設会場で開催)をやることが決まっていますし、「フェスをつくる」っていうことに集中していきたいと思っています。色んな事業に手を出すというよりは、とにかくフェスに絞っていく。カルチャーって広くなりすぎる傾向があるので、ピュアに最高のフェスを突き詰めていきたいなーって。
清水:「GREENROOM FESTIVAL」は神戸でもやってほしいって言われてるじゃない。そのへんはどう考えているの?
釜萢:神戸って雰囲気やロケーションが横浜に似ているって聞きますよね。いつか関西にもチャレンジしたいとは思ってますけど、僕も今抱えているフェスだけでアップアップです(笑)。
Text:上野 功平
Photo:遥南 碧
INFORMATION
ニューヨーク発のキューバンメキシカンレストラン「カフェ ハバナ トウキョウ(Cafe Habana TOKYO)」が、2016年5月に代官山に誕生。ニューヨーカーがお気に入りのブランチスポットとして人気のNY店。1997年、マンハッタンのノリータ地区に誕生した「カフェ ハバナ」は、連日、地元ファンはもちろん、ミュージシャンやモデルなど、セレブたちも行列するというお店。ニューヨーク、カリフォルニア、ドバイに続き、アジアでは東京・代官山に初出店になりました。NY本店の看板メニュー。セレブたちの好物という、とうもろこしを焼き上げ、チーズを豪快に振りかけた“グリルドコーン”をはじめ、またシェフこだわりのハムとチーズ、自家製ローストポークをたっぷり挟んでプレスしながら焼き上げた“クバーノ(キューバン サンドイッチ)”をぜひ1度お試し下さい。飾らないダイナーの雰囲気に癒され、グリルドコーンやローストポークに元気をもらって下さい。(公式サイトより)
Cafe Habana TOKYO
住所:東京都渋谷区猿楽町2-11氷川ビル1f
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