2010年から「癌」「臓器移植」「認知症」「障がい」などヘヴィなテーマと音楽やアートを掛け合わせて行われてきた「SOCiAL FUNK!」。11月に開催される第7回目の「SOCiAL FUNK! 2019 – Human Science(芸術と人間科学)」には、BUDDHA BRAND、あっこゴリラ、漢 a.k.a GAMIといった豪華ラインナップが集い、話題を集めている。そんな中、本イベントを主催するNPO法人Ubdobe代表理事の岡勇樹氏に話を伺った。
「SOCiAL FUNK!」とは?
-2010年から続く「SOCiAL FUNK!」の開催のきっかけを教えてください。
自分がとにかく音楽が好きで、10代の頃からクラブやライブハウスに通いまくっていたんです。そこから好きが高じてイベントも主催するようになりました。ただ、家にもまともに帰らないような生活を繰り返していたある日、うちの母ちゃんのガンが発覚して、そこから半年で亡くなってしまったんです。しかも、実は入院する2年も前から家族に内緒で自分の病気と向き合って孤独に闘病して来たことが判明して。2年間も家族の誰もそのことに気づかずにいてしまったし、ガンだって知ってからの半年間も、自分が起こせた行動はなにもなかった。そのことが今でも大きな後悔として残っているんです。
そこで、そうなってしまった原因ってなんだろうって考えるうちに、この世にある医療福祉の情報が、自分のような人間の元に届く仕組みがないということに気づいて。医療とか福祉の情報がもっと若者にカジュアルに届く仕組みがないかなと漠然と思っていたときに、自分が医療とか福祉がテーマのイベントを作ればいい、という発想に至りました。それがこの「SOCiAL FUNK!」です。
-そもそもこのイベントを主宰するUbdobeとはどんな団体なのでしょうか?
「医療福祉エンターテインメント®」というキーワードで活動している団体で、2010年に法人化し、今は3つの事業部を運営しています。1つ目はイベント事業部で自主開催のクラブイベントや、全国各地の行政から委託を受けて医療福祉関係のイベント制作を行っています。2つ目がローカル事業部と言って、日本全国の離島や山間部への若手医療福祉職の移住のきっかけとなるツアーやイベントを開催しています。また、「福祉留学」という新たなプロジェクトも始めました。3つ目はデジリハ事業部という事業で、デジタルアート型のリハビリテーションを開発しています。体の動きをセンシングしてデジタルアートと連動させることで今までのリハビリにゲーミフィケーションやエンタメ性をプラスしていくようなプロジェクトです。
-イベント事業の中の「SOCiAL FUNK!」ということですが、毎回個性的なラインナップが話題になります。どういった思いや狙いがあるのでしょうか?
「SOCiAL FUNK!」には、クラブとかフェスシーンで活躍するアーティストが出演するので、単純にそのアーティストのファンだという人が集まってくれます。けど、実はアーティスト陣の中に難病当事者のアーティストがいたり、展示されているアート作品の背景には医療福祉にまつわるテーマが隠されていたり、それらに精通する方々に様々な業界からトークゲストとして出演してもらったり、目や耳など人間の感覚を制限してミッションをクリアするようなアトラクションを展開したりと、いたるところに医療福祉の要素が散りばめられています。フードも福祉作業所から仕入れていたり、運営スタッフも医療福祉専門職が多いのでケガ人や具合の悪い人が出ても大丈夫です(笑)。
-今回もヒップホップ勢を中心に、豪華なラインナップが揃っています。
自己中心的感情を元に、自分の大好きなアーティストや最近注目している方々をブッキングしました。今年は伝説的ヒップホップグループであるBUDDHA BRANDや、近年フェスシーンなどを盛り上げているあっこゴリラ、ヒップホップだけに限らず仮面女子などのアイドルやGOMA and the Jungle Rhythm SectionなどのJAM系バンド、伊勢谷友介さんなどのアクティビストの方々も多く出演していただきます。今回のテーマである「芸術と人間科学」のコンセプトを伝えきるために、ジャンルや活動範囲など関係なく幅広くブッキングすることを意識しました。
-トークや展示、ヒューマンカメラ・ドリフト車椅子・体力発電などがあるということですが、通常のフェスではなかなか触れられない体験が揃っていると思います。具体的にどういったことが体験できるのでしょうか?
今回は「芸術と人間科学」というテーマで行うので身体や精神とテクノロジーが掛け合わさったコンテンツを集めました。例えば、障がい者の移動手段として考えられている車椅子をスポーツやエンターテインメントとして置き換えた時に生まれる発想をそのまま形にした「ドリフト車椅子Slide Rift」や、人体と人体が触れている時のみシャッターが降りるヘルメット型デジタルカメラ「ヒューマンカメラTouchy」、また、世間一般ではシリアスなテーマである「失禁」をただ縁遠い汚いものとして扱うのではなく、疑似体験を通してそれが人間にとってどういう感情の変化を及ばすのかを知ってもらう「失禁体験装置」など、すべて、深いテーマ性を持ちながらもエンターテインメント性の高いコンテンツとなっています。
-それでは最後に「SOCiAL FUNK!」をはじめて知った人や興味を持ったというような方にメッセージなどあれば!
過去の「SOCiAL FUNK!」で、あるアーティストのファンだというタトゥーだらけのお客さんに話しかけられたことがあったんです。その時に彼が言ってくれたのが、「すごくいいイベントだった。とりあえず、今日家帰ったら実家の母ちゃんに電話しようと思うよ。」という言葉でした。そのときに、自分ができることはこれだと思ったんです。医療福祉のすごく難しい情報を知識として詰め込むよりも、自分の近くにいる人の小さな変化に気づいてアクションを起こすきっかけを作る。その現象を多発させることが、このイベントの意義だと思っています。だから、医療福祉とか人間科学とか関係なく、ラインナップを見て「来たい」と思ったら、シンプルに来てほしいです。深いことは考えずに、シンプルに「来ればわかる」と思います。ぶちアガりましょう。10月20日まで限定で、前売・特典付きチケットがCAMPFIREサイトで販売中です!
SOCiAL FUNK! 2019 – Human Science(芸術と人間科学)
ソーシャルファンクは芸術と人間科学が交差する屋内型音楽フェスティバル。DJやライブパフォーマンスの他に研究開発者によるトークや展示、先端技術の体験ブースなどが展開され、アーティストとアカデミアが融合する年に一度の祭典となる。ハードコアPUNKSもテックFREAKSもソーシャルNERDSもヒップホップHEADSもオタクGEEKSもニホンジンもガイコクジンも大人も子供もケンジョウシャもショウガイシャも男も女もどっちでもない人もどっちでもある人も、何かが壊れ創られるこのカオティックな空間に、居合わせよう。認知症、がん、臓器移植、障がい、難病・・・私たちは2010年よりこのイベントを通じて人間の命そのものに関する様々な課題と向き合ってきました。そして、2019年。それらを時には乗り越え、時には共に生きようと持てる限りの知識や技術を尽くして生まれた科学やテクノロジーである「人間科学」をテーマに表現します。出演者/Artists
<LIVE>
・BUDDHA BRAND
・あっこゴリラ
・漢 a.k.a GAMI
・DOTAMA
・仮面女子
・GOMA & The Jungle Rhythm Section
・山川冬樹
・UQiYO
・GOMESS
・Indus & Rocks
・KEITA & NAKANISHI
…and more<DJ>
・BAKU (KAIKOO)
・EYE VDJ MASA
・no.9 (DJ set)
・DJ Yogurt
・DJ Funnel
・Inner Science
・Shhhhh
・NOAH VADER a.k.a XMËA
・DJ RYOKO
・DJ C-CHO
・DJ KUME
・DJ TREK a.k.a 音の犯罪者
…and more<TALK>
・伊勢谷友介(俳優 / 監督 / 株式会社リバースプロジェクト 代表)
・ブルボンヌ(女装パフォーマー / ライター)
・山川冬樹(ホーメイ歌手 / 現代美術家)
・杉山文野(トランスジェンダー活動家 / NPO法人東京レインボープライド 共同代表)
・草野恵美(アーティスト / Satellite Young)
・武藤将胤(一般社団法人WITH ALS 代表)
・石井洋介(日本うんこ学会 会長)
…and more<ATTRACTION>
・SLIDE RIFT(ドリフト車椅子)
・HUMAN CAMERA TOUCHY(人間型カメラ)
・体力発電(リアル人間発電所)
・VISION WALK(感覚麻痺ツアー)
・THE SILENT BAR(手話スラングバー)<EXHIBITION>
・VR認知症プロジェクト(VR体験)
・失禁体験装置(装着体験)
・DIGI-REHA PROJECT(プログラミング体験)
・THINK UNIVERSAL(ポスター展示)
・日本うんこ学会(トイレ内展示)<FOOD>
Coming Soon…<MC>
・Dyson Daigo<SIGN LANGUAGE>
・武藤洋一
…and more<SPACE DECORATION>
・大島エレク総業