【主催・関係者インタビュー】韓国で初開催されたJ-POP特化フェス「WONDERLIVET」を振り返る

2024年11月8日(金)〜10日(日)の3日間にわたり、韓国・KINTEX HALLにて、「WONDERLIVET 2024」が開催された。「WONDERLIVET」は、昨今の韓国でのJ-POPの人気を受けて、今年初開催となった韓国最大級のJ-POPフェスだ。AKB48、新しい学校のリーダーズ、Creepy Nuts、Little Glee Monster、Saucy Dog、水曜日のカンパネラ、sumika、m-floといった、日本の音楽シーン、そしてフェスシーンを牽引するアーティストが集結し、会場には2万5千人のファンが詰めかけた。

初開催かつ、現在韓国で空前のJ-POPブームが起きているということで、実際に現地に足を運んでみたが、その前評判通り、会場には若い音楽ファンが日本のアーティストやフェスのグッズを身に纏い、日本のフェスにいるかのような錯覚になるほどの盛り上がりだった。そのような盛り上がりの背景、さらに今回のフェスが生まれたきっかけから今後の展望まで、WONDERLIVETの主催チームおよび、ブッキングに関わったソニーミュージックの宋英明さんに語ってもらった。

コロナ禍を経て生まれた新しいライブ・フェス文化

-まずはWONDERLIVET立ち上げのきっかけ、開催にいたる経緯を教えていただけますか?

WONDERLIVET(以下、W):そもそもこのフェスは、WANDERLOCHLIVETという2チームが組んで運営しているのですが、これまでも韓国国内で、YOASOBI、Ado、ずっと真夜中でいいのに。、LiSAなどのアーティストの公演を手掛けてきました。フェス立ち上げのきっかけとしては、2023年にYOASOBIをブッキングしたときに、「日本の音楽が流行っているので、J-POPに特化したフェスを開催したい」という声があり、少し動いてみたところ、各マネジメントから前向きな返事があったので、一気に動き始めたという感じです。最初に話が出たのは2023年の5月頃なので、1年以上かけて準備しました。

-今韓国でJ-POPが人気ということについてですが、これまでとは違う兆しみたいなものがあるでしょうか?

W:15年ほど前にも、日本の渋谷系のような音楽が流行ったことがあったのですが、その後韓国ではJ-POPの大きな動きがあまりなかったんです。ただコロナ禍を経て、家で日本のアニメやドラマを見る若者が増えて、日本のコンテンツが以前よりも広く見られるようになりました。そこから主題歌やタイアップソングを聴いたりすることが今まで以上に一般化しました。imaseの「NIGHT DANCER」のヒットなども含めて、様々な影響があったのではないかと思いますが、今は確実に人気に火がついている状態です。また政治的なことで、日本のものをプッシュしやすい状況というのも大きく影響していますね。

-そんな状況の中とはいえ、J-POPというジャンルを絞った状態で、初開催ながらこの規模のフェスを実現できた要因はどのようなところにあると思われますか?

W:コロナ禍以前も、韓国内のJ-POPファン層は数で言うと今と同じくらい存在していたと思います。ただしニッチなマーケットとして、オタクカルチャーとして見られていた面がありました。家ではJ-POPを聴くけれど、ライブに足を運ぶという動きまでに繋がっていなかった。そんな状況で、コロナ禍に突入して、そもそものライブ文化自体が途絶えた。そしてコロナ禍があけて、ライブを観にいくという行為が、J-POPファン層にとって当たり前のものに変化した。そこにはいろんな要因があると思いますが、YOASOBIをはじめ、いろんなライブを行ってきて、確実に変化を実感しました。それがこれだけの規模のフェス開催につながったのだと思います。

-今日来ているお客さんは、普段は他のフェスにも足を運んでいる方も多いのでしょうか?

W:おそらく今日来ているお客さんのうち、半分くらいは国内のフェスも好きだったりとか、サマーソニックをはじめとした日本のフェスにも興味がある層だと思います。その逆で、J-POPは好きでライブも行ったことあるけど、フェスに行くのは初めてという人もいるという印象ですね。

-会場内には、サマソニをはじめ、日本のフェスのTシャツを着ている方も多く見かけました。先ほど韓国内のフェスという話が出ましたが、国内のフェス文化に関しては、どのように捉えていらっしゃいますか?

W:韓国のフェス事情としては、3〜5年の周期でトレンドがあります。今はヒップホップとEDMが少し元気がない一方で、バンドの人気が高まっている状況なんです。その中で、今回のようなJ-POPに特化したフェスということで、フェス自体に初めて来る層も入ってきていて、フェスのトレンドのひとつとしてJ-POPが乗っかってきたのかなと思います。

-J-POP以外で、ジャンルを絞ったフェスというのは他にも新しく生まれたりしていますか?

宋英明(以下、宋):どこかの国の音楽にカテゴライズしたフェスは自分が知っている限りないですね。ジャンルを絞ったものだと、ジャズフェスはありますが、ジャンルを絞って1万人以上の動員を見込めるような、ある程度マジョリティに届くようなものは、韓国では少ないですね。

-WONDERLIVETは本当に特殊なケースということですね。

宋:とても特殊だと思います。先ほども話に出たように、お客さんの中にはフェスに初めて来る方も多くて、フェスという文化を経験したことのない層も来ています。

-まだフェスの最中にはなりますが、今回の集客や反応みたいなものに関しては、どのように感じていますか?

宋:10代後半から20代前半のお客さんがしっかり入っている印象です。初開催のフェスにしては、非常に良かったと思います。

日本アーティストにとっての韓国市場の可能性は?

-宋さんはブッキングという立場で今回のフェスに関わられていたと伺いましたが、日本のアーティストを売り込んでいく立場として、「WONDERLIVET」をはじめとしたフェスをどのように捉えていますか?

宋:アーティストが海外でライブをやっていく上で、個人的に理想としている最初の入り口はやっぱりフェスなんですよ。最初からワンマン公演として会場を埋めることはなかなかハードルが高いので、ジャンル関係なくお客さんにしっかり見てもらえる場所としてフェスはとても貴重です。

-日本の音楽業界にとって、韓国市場というのはどのような位置づけになってきていますか?

宋:日本のアーティストが、韓国市場にしっかりと目を向けるようになったのは最近の話なんですよ。以前は韓国で、3000以上、5000以上のキャパを埋めるのは難しいという印象を誰しもが持っていました。けれど、コロナ禍以降、先ほど名前が上がっていたアーティストが3,000〜5,000以上のキャパを埋められるようになってきて、日本のアーティストにとっても韓国は面白いマーケットになってきているなと感じています。

-アーティスト自身は韓国をどのように捉えているのでしょうか?

宋:アーティストとしても、自分たちの音楽がどれだけ韓国で聴かれてるのかを知る手段が増えてきています。僕がいつもアーティストに見せているのは、韓国のネイバーという検索エンジンで、アーティスト名をハングルで検索すると、ファンが作ったコンテンツがたくさん上がってきます。あとは、編集して字幕をつけた上でYouTubeに投稿してくれるファンも多いですね。我々の知らないところでそういった動画が数百万回と回ったりもしていますし、そういう反応を知って、最近はアーティストからも韓国に行きたいという声を聞くようになりました。

W:以前は数字として可視化できるツールがあまりなかったですが、色々とアナリティクスツールが出てきて、国ごとの数値が見られるようになってきました。日本のアーティストを見てみると、欧米のトップアーティストとほぼ変わらない数字を韓国では持っているということもよくあります。そういったツールがブッキングする上でも役立っていますね。

韓国のフェスシーンとWONDERLIVETのこれから

-今年釜山ロックフェスティバルにも参加したのですが、土曜日は6万人集客があり、韓国のフェスの盛り上がりを感じました。ジャンルの隆盛はあれど全体的にシーンとして盛り上がっていると捉えてもよいのでしょうか?

W:そうですね。「WONDERLIVET」も、2万5000人という初のフェスとしてはかなり多くの方に来場いただきました。釜山ロックフェスも日本のアーティストが出演していましたし、やはりバンドシーンの盛り上がりとともにフェスが盛り上がっています。

-K-POPに特化したフェスなどは継続的に開催されているのでしょうか?

W:K-POPの場合、MAMAやMelon Music Awardのように、アワードという形で開催されることが多いですね。アイドルという文脈で言うと、今回「WONDERLIVET」には櫻坂46やAKB48が出演してくれたので、K-POPも含め、そういうミックスも面白いんじゃないかと思っています。

-それでは最後に何かメッセージなどあれば。
W:読者の方ではないかもしれませんが、日本のアーティストやレーベルの方に伝えたいのは、今J-POP、日本の音楽が本当に韓国でたくさん聴かれているので、怖がらずに韓国の市場への進出を試してみてほしいですね。例えば今回出演したALIは早速韓国のSNSでも大きな反響を呼んでいます。

宋:「呪術廻戦」のエンディングテーマ曲がヒットしたりと話題にはなっていましたが、韓国では認知されているバンドではありませんでした。しかし、ライブ力が凄いがすごいバンドですし、韓国でも絶対に盛り上がると信じてフェスにピッチングさせて頂き、出演の機会を頂くことができました。そしてその結果として非常に良い反応を得られたと思っています。

-初めから単独公演を行うことにリスクを感じるなら、まずは「WONDERLIVET」で試してみるという流れができたらアジアの中でもこのフェスが特別な存在になっていきそうですね。

宋:日本のアーティストにとって、今後海外市場の重要性がますます高まっていく中で、特に東アジアは重要なマーケットです。今回のように国内のアーティストを海外に出していく努力はもちろん、フェスシーン全体の話をすると、日本国内では大規模フェスのラインナップの同質化が話題にあがることも多く、そこに課題もあると思うので、海外からも魅力的なアーティストを招いて、従来とは違った新しい形のフェスを作り上げることも大事なのではないかと感じています。

W:最後に少し宣伝になってしまいますが、WANDERLOCHは、自分たちでライブハウスを所有しているので、フェスを開催したり、ホールでライブを行ったりしています。そこで日本のアーティストの公演も行なっています。「WONDERLIVET」がショーケースのような役割を果たし、その後アーティストが成長していくという流れを作っていきたいです。ライブだけでなく、韓国のテレビ番組出演やプロモーションなど立体的に日本のアーティストをサポートしてきたいと思っています。そして最後に、「WONDERLIVET」は来年も開催予定です!

出演アーティスト

11月8日(金)

HANRORO
iri
Leina
Saucy Dog
sumika
THORNAPPLE
TOUCHED
UNISON SQUARE GARDEN
eil
Raon
トゲナシトゲアリ
ALI
The Volunteers

11月9日(土)

AKB48
新しい学校のリーダーズ
Balming Tiger
Charming Jo with Annoying Box
Cö shu Nie
Creepy Nuts
Little Glee Monster
m-flo
MAN WITH A MISSION
milet
Silica Gel
水曜日のカンパネラ
MRCH

11月10日(日)

asmi
Cody・Lee(李)
Daybreak
LUCY
MAISONdes
QWER
Reol
櫻坂46
Tani Yuuki
キタニタツヤ
冨岡愛
yama
優里
CHEEZE

WONDERLIVET 2024
日程:2024年11月8日(金)~10日(日)
韓国・KINTEX HALL
会場:公式サイト


Text:福井郁花
Interview:津田昌太朗
Photo:©️WONDERLIVET FRIENDS

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