「FUJI ROCK FESTIVAL」(フジロック)という言葉が日本の音楽シーンで特別な響きを持つようになってから、四半世紀以上が経過した。そしてその歴史に、密接に寄り添ってきたオフィシャルショップこそが「岩盤/GAN-BAN」。フジロック黎明期に誕生し、グッズ販売のみならず、フェスのカルチャーを形作る拠点としての役割を果たすなど、その影響は単なる物販の枠を超えている。
そのGAN-BANの設立25周年を記念し、12月26日より渋谷PARCO 4FのPARCO MUSEUM TOKYOで、『TIME CAPSULE 2025: A FUJI ROCK Odyssey -時空を超えるフジロック展-』が開催。今回は、25年の軌跡とフジロックの記憶を体験した展覧会の模様をレポートする。
過去と現在の記憶が交錯する〈記憶への入口〉
今回の展覧会は、GAN-BANの25年間の歩みを“タイムカプセル”という構造で可視化する場となっており、展示は3つのゾーンに分かれ、来場者を時間の流れと共に歴史の旅へと誘う。
ディレクションを担うのは2007年以降、GAN-BANやフジロックのデザインに数多く携わるキュレーターの半田淳也。NASAのボイジャー探査機に搭載されたゴールデンレコードに着想を得たロゴも担当し、ふたつのカプセルは「音声波形」と「映像データ」を象徴しているという。
展示は〈記憶への入口〉として、初代GAN-BAN NIGHTのVJを務めた関和亮の映像作品を導入部配置。この映像は、フジロックという祭典の始まりとGAN-BANが果たしてきた役割をシンボリックに表現している。制作にあたっては、過去と現在の記憶が交錯するビジュアルが用いられ、当時の空気感が映像という形で蘇る。関和亮は初期GAN-BAN NIGHTの歴史に深く関わる人物であり、その後もフジロックの舞台でVJ映像やステージデザインを担当してきた。今回の展覧会においても、彼の表現はフェスという現場に流れる時間を見事にヴィジュアル化していたと言える。
そして背後を振り返ると、フジロックのキービジュアルを手掛けるデザイナー&アーティスト・渡辺明日香のアート作品が登場。渡辺明日香がフジロックに関わり始めたのは2017年ということで、彼女の作品を見て、ここ10年ほどのフジロックの記憶が蘇る人も多いのかもしれない。
有形文化財と“証言”で振り返る〈タイムカプセル〉
さらに奥に進むと現れる〈タイムカプセル〉のエリアは、歴代フジロックのビジュアルをプリントした232枚というフォトTシャツをはじめ、過去のアーカイブグッズや雑誌の記事の切り抜きなど、膨大な数のフジロックグッズで構成される。これらのアイテムは、各年代のフジロックの記憶を具体的なモノとして保存してきた有形文化財であり、そのものが多くを語りかける“証言”だ。
例えば初期のフジロックにおけるTシャツのデザインには、当時のフェス・カルチャーの熱量や時代性が刻まれている。〈タイムカプセル〉の展示では、それらを順に辿ることで、フジロックがどのように進化してきたのかが立体的かつエモーショナルな形で見えてくる。美術作家・松本千広による展示構成は、このアーカイブを単なる展示ではなく、“探索”という体験へと変換した。来場者はその空間を巡りながら、モノと歴史の繋がりを自らの身体を通して発見していくことになる。
そして歴史を語る上で、音の痕跡は欠かせない。今回の展示ではSUGIURUMNが音響演出を担当し、THE ALEXXによる新作「Beautiful Surrender」が会場の随所で流れる。その楽曲はGAN-BANの25周年を記念して制作されたものであり、それは歴史と現在の接点を象徴。展示の時間軸に合わせて楽曲を紡ぐことで、来場者は視覚だけでなく、聴覚も通して歴史を体感できる。
アートやアーカイブに触れる〈現在、そして未来へ〉
展示のラストとなる〈現在、そして未来へ〉は、これまでの歴史を継承しつつ、フジロックの未来も見据えた表現が展開されている。GAN-BANの初代店長で現代美術家のShohei Takasakiによる、過去のフライヤーやTシャツを用いたキャンバス作品は、これまでの歴史をアートで再構築していた。また、展覧会のティザーを制作したグラフィックデザイナー・Kamikeneによる音波インスタレーションは、その実験的なビジュアルとギミックが展覧会の空間に馴染んでいた。
その先に進むと、ビデオチーム・最後の手段による映像作品が流れる。その映像を観ることで、先ほどまで過去に浸っていた感覚が自然と現在に辿り着き、さらには未来へと誘われていく。
そして展示の先に現れるのは、オリジナルグッズが並ぶミュージアムショップ。ここではフジロック’98のステージをとらえた、BLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのコラボTシャツや、フジロック・コレクションの限定アイテムが提供される。それらは単なる商品ではなく、フジロックとGAN-BAN の歴史を象徴する貴重なアーカイブと言えるだろう。
今回の展覧会はGAN-BANの歴史を、携わってきたアーティストの作品や残されてきた記録・記憶とともに体験できる場として存在していた。そしてここまでの時間を紐解くことで、来場者はフジロックという唯一無二のフェスの歴史を、新たな角度で受け止めることができるだろう。
フジロックに1997年から参加している人も、2025年に初めて参加した人も。展覧会は2026年1月12日まで開催しているので、ひとりでも多くの人に“参加”ではなく“体験”してほしい。
Text by ラスカル(NaNo.works)
GAN-BAN 25th Anniversary Special Exhibition
TIME CAPSULE 2025: A FUJI ROCK Odyssey ― 時空を超えるフジロック展 ―
会場:PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
会期:2025年12月26日(金)- 2026年1月12日(月・祝) 11:00-21:00
入場料:500円
展覧会HP
岩盤25周年「時空を超えるフジロック展」がPARCO MUSEUM TOKYOにて12/26(金)〜1月12日(月)開催
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