先日ステージ別ラインナップも発表され、今年も話題沸騰の「FUJI ROCK FESTIVAL ’26」(フジロック)。ラインナップはどのように組まれ、ヘッドライナーはどんな議論を経て決まったのか。フジロックを実際に作っているSMASHのスタッフに、その裏側を聞いた。
今回集まってもらったのは、佐脇(盛漢)さん、三田さん、そして平田さん。かねてより声の多かった“フジロックの中の人”による座談会というかたちで、ブッキングの舞台裏からラインナップの見どころ、そして進化を続けるフジロックの現在について、現場の空気感そのままに語ってもらった。
※本記事は#FJPodcast 5月7日配信の内容を編集したものです。
フジロックを支えるチームの役割とブッキングの考え方
津田:フジロック主催者座談会ということで、フジロックを主催するSMASHから3名をお招きしました。まずは自己紹介からお願いします。
佐脇:SMASHの盛漢です。ホワイト・ステージを担当しています。元々はルーキーの審査やアーティストの対応を8〜9年やって、やっとステージに行かせてもらったって感じです。
三田:フジロックではプロモーションや、今年からブッキングなども担当してる三田といいます。今まで現場ではアーティストの送迎用の車両手配などをやってました。
平田:平田です。僕はアーティストのブッキングと、当日はグリーン・ステージの担当をしてます。
津田:それぞれ役割が違うんですね。ステージごとの色の違いって、中の人的にはどういう意識なんですか?
佐脇:グリーンがメジャーなアーティストで、レッドがフレッシュなアクトって考えた時に、ホワイトって、ちょうど真ん中にあるんですよ。両方の要素を拾うポジションでもある。「自分のブッキングしたアーティストを自分のステージで観たい」っていう想いは、常にみんな持ってると思うんですけどね。
平田:みんなそれぞれのブッキングしたいアーティストを一緒に話して、「どこに合いそうか」「どこで出したいか」を決めます。並びによっては「ホワイトのトリがこれなら、次これ来たらおもしろいよね」とか。
佐脇:めちゃくちゃ高いプレイリストを作ってるみたいな感覚ですね。「このアーティストをここで見せたらおもしろいんじゃないか」っていう妄想から、意外とはまったりするんですよ。
Khruangbin抜擢の背景と、3組のバランス感覚
津田:まず、ヘッドライナーのブッキングっていつ頃から動き出すものなんですか?
佐脇:フジロックが終わった後、すぐ動きますね。グリーンのヘッドライナーに関しては、もう来年の話が始まってたりもします。
平田:年内に3組とも決まったらもう万々歳で、「安心して年を越せる」って毎年言ってます(笑)。今年はThe xxが最初に決まって、それが去年の段階。1月末ぐらいにKhruangbinとMassive Attackが決まりました。
津田:SMASHとしての全体的な方針みたいなものはあったんですか?
佐脇:僕個人としては、その年に合ったヘッドライナーを出したいっていうのは常にありますね。新しいアーティスト、今のフェスシーンに合う人をブッキングしたい。でも大御所を入れた方が安定する部分もあるから、そのせめぎ合いをみんなでやってます。
三田:ヘッドライナーの並びとしては、結果的にすごく良くなったと思います。去年のVulfpeckとかもそうでしたが、フレッシュな風も吹かせつつ、マッシヴ・アタックはベテランの安定感もあるし、全体としてバランスがいいですよね。
津田:Khruangbinの抜擢は、早い段階から勝負しようと決めていたんですか?
平田:最初は単独公演の話をしてたんですよ。でも、今までフジにも出てたりするし、ちょっとこのタイミングでヘッドライナーとして勝負したいよねって話になって。土曜日のヘッドライナーとして、大きな抜擢というかたちで決まりました。
津田:発表時の反応はどうでした?僕らのメディアでも予想合戦みたいなことをするんですけど、Khruangbinの名前は出てなかったので。
平田:The xxは久しぶりに動くことが決まってたんで、お客さんの間でも予想されてましたけど、Khruangbinは一番読まれなかったと思うので、少し“してやったり”という感覚はありましたね(笑)。Massive Attackは去年、特に動きがなかった頃から結構早めに話が来てたんですよ。そしたら久々のシングルがTom Waitsとのコラボで、とんでもないものが出てきたなと思いましたね。
佐脇:すごいよね、3組とも色が全然違って。ぜひ、タイムテーブルが出たときのそれぞれの曜日の並びを見てほしいです。僕らの意図が見えると思うので。
曜日別に語る、今年の注目アクト
津田:各曜日の見どころを伺いたいのですが、まず金曜日からいってみましょう。
佐脇:Turnstileはぜひ皆さんに観てほしいです。2年前に出てくれた時も、だいぶわちゃわちゃにして帰ってくれて。とにかく最高でした。
津田:Zeppでの公演でも、柵を全部外していましたよね。
佐脇:皆さんに多大なご迷惑をおかけしましたが(笑)。個人的にはSon Rompe Peraっていうメキシコのバンドが気になってます。パンクだけどマリンバを叩くのが特徴で、斬新でおもしろいなと。SMASH UKのジェイソンが急に左フックみたいにぶち込んできて、「あ、めっちゃいいじゃん」ってなりました。
津田:土曜日はKhruangbin、藤井風、TOMORA、Basement Jaxxと並んでます。1日券の先行販売分は早々に売り切れましたが、この反響はある程度予想していましたか?正直なところを聞きたいです。
佐脇:予想はしてなかったですね。ただ、藤井風さんは結構前からアイデアとしてあって、何年も前から話は出てたんですよ。
三田:ロラパルーザ、コーチェラと出演して、その流れでフジロックというかたちですね。
津田:今年これから出演するフェスはフジロックくらいですよね。
平田:藤井風さんと一緒に、ぜひ全体のアーティストを見ていただきたいですね。Khruangbinとの並びとか、お互いに「おもしろいよ!」って提案できるいい並びになってると思うので。
佐脇:お互いのファンの層が混ざり合って、いい化学反応があればいいですね。そうやってクロスオーバーしてくれるのが、フェスとしては理想なので。
津田:日曜日のMassive Attackの日はどうでしょう?
三田:日曜日はAngine de Poitrineとかもおもしろいですよね。少しバズりはじめた頃に「あ、いいな」と思って、比較的スムーズに決まりました。
津田:なんか去年のカトパコみたいな、「なんだこれは」みたいなところから盛り上がってますよね。
佐脇:僕は個人的にThe Cabsがすごく好きで、もともとバンドマンだったので、ああいうテクニカルなバンドを高校生の頃から聴いていたんです。最近復活して、フジに出ていただけるということで、本当に楽しみにしてます。カオスすぎて何をやっているのかわからない、みたいなところも含めてかっこいいんだよな。アメフトも大好きだし、モグワイも。
平田:僕はFrikoですね。前回のグリーンから担当していて、アルバムがまた素晴らしいのでぜひお願いしたいなと。今の彼らを見られるのはかなり楽しみです。
佐脇:あとはTĀL FRYっていうインドのバンド。民族楽器がずらっと並んでて、結構おもしろいです。ガチインディア。
津田:最近アジアのアーティストも増えていますが、意識的な部分はありますか?
佐脇:アジアと欧米をあまり分けるのはよくないなと思っていて。いい音楽をちゃんと出そうよ、というスタンスでやってます。
平田:たまたまおもしろい音楽を探していたら、アジアにいいものが多かったってことですね。最初は「インドにおもしろいバンドいるよ。YouTube見てみて」っていう個人の会話から始まったりするんですよ。
三田:「これフジロックにいいと思うんですけど」って。みんな趣味がバラバラなので、たまに何言ってるか分からない時もありますけど(笑)
佐脇:お互い「何言ってんの?」ってなってから検索して、意外と良かったりする(笑)。みんな持ってるネタが違うから、その集大成として、このバラバラなラインナップができあがってるんですよ。
変わる発表スタイル、進化するステージ
津田:ラインナップの発表方法も、昨年から変わりましたよね。一気にドカンと出すかたちに。
平田:そうですね。徐々に出すより一気に出した方が、お客さんもチケットを買いやすいのかなと。買う人は買うので、勿体ぶらずに一気に出した方が、即決してもらいやすいのではという判断です。
佐脇:ドンと出た方が潔いよね。日にちが近づいてるのにセールスの動きが見えないと、こちらも落ち着かないですし。
三田:一つひとつのバンドが持つ情報量がガッと拡散されるから、見え方も華やかでおもしろいと思います。
津田:プロモーションの山をいくつも作るより、今の時代には合ってるのかもしれませんね。ステージの話だと、昨年のオレンジ・エコーのリニューアルも話題でした。
三田:僕は仕込み中しか見られなかったんですが、デザインがすごくお洒落で良かったですよね。友達に聞いても「あそこ良かった」っていう声が多かったです。
津田:最高でしたよ!一番端っこにあるからこそのストーリーがあるし、演出も素晴らしかったです。
佐脇:かなり奥まった場所なので、人が集まってくれるか不安だったんですよね。でもびっしり埋まってたから良かったです。
三田:フジロックは、ああいう小さいステージがおもしろいんですよね。パレス・オブ・ワンダーとかも。
佐脇:ああいう場所こそ、フジロックの心臓ですよ。夜深くなってくると、みんなちょっとボロボロになった感じで集まってきて。
平田:まずは一度、苗場の空気を体感してほしいです。一回来れば、僕らが言っている意味が分かると思うので!
三田:飲食店も美味しいですし、1年に一度だけ現れる“ひとつの国”のような空間に、ぜひ来てほしいですね。海外旅行に負けないくらいおもしろいと思います。
佐脇:「日本じゃないみたい」とよく言われますよね。海外に行くと渡航費だけでもかなりかかりますが、それよりは安くこの体験ができるし、ぜひ来てほしいですね。
Text:阿部仁知
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