Festival Junkie Podcastで配信されたクリエイティブマン代表・清水直樹氏のインタビューの一部をテキストでも公開。9月の「SUPERSONIC」開催に向けての現状の取り組み、6月発売のrockin’onでのインタビューからの変更点、検討している感染症対策、さらには国との交渉や連携にいたるまでを語ってもらった。(インタビューは7月9日実施)
INTERVIEW:クリエイティブマン代表・清水直樹氏
9月に開催される「スーパーソニック」の現状についてお話を伺いたいのですが、まずはラインナップの前に、どういった規模、会場の使い方での開催を想定していますか?
まずrockin’on6月号のインタビューを読んだ方は、そこからの変化がかなりあることを納得してもらいたいなと。インタビューのときは、2ステージでやる予定で、東京会場は、マリンスタジアムと屋外のビーチか外周にもう一つステージを作ろうとしていて、規模感で言うと、「サマーソニック」のマリンスタジアムとソニックステージの二つというものを想定していました。日程に関しては、去年は3日間でしたが、今年は2日間。今回はポスト・マローンの出演が厳しいだろうということで。
5月時点で東京・大阪ともに2日間開催を判断したと。
そうですね。そして今、僕らは経産省とアーティストの来日に関して物事を進めているんです。例えばオリンピック・スポーツ関係はスポーツ庁、演劇・クラッシックは文化庁、ポップス・ロックなどは経産省というように窓口が分かれていて、スポーツや演劇関係は来日していて、ポップス・ロックだけが止められている状況です。経産省としては「スーパーソニック」が初のケースになるので、彼らと話し合いながら、海外のアーティストを安全に入国させるということを今やっているんです。
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「スーパーソニック」が海外アーティストを日本に呼ぶ初の事例になるということですね。
去年の3月からだから、1年6ヶ月かかってようやくまた海外のアーティストが日本に来るというスタート、だからリボーンだよね。それは僕らクリエイティブマンがまずやろうじゃなくて、洋楽プロモーター10社のもとで皆で動いているんですよ。
アーティストの入国方法のルールを決めて行かないといけない。隔離の期間をどうするかなどもあると思います。
それを考えたときに、まず先ほど言った2ステージだと、来日アーティストが20アーティストくらいになってしまう。そのあたりの数だったり、隔離のこと、スタッフの動きなどを考えると、最初のスタートとしてはハードルが高すぎるなと。とにかく来日アーティストを減らすしかなくて、必然的にステージを一つにしようということになった。あとお客さんの移動も、感染症対策的にもあまり行き来がないほうがいい。今回は絶対的に(フェスを)やるということを決めた上では、1ステージでないと難しい。アーティストも減らして、1ステージでやろうという結論にいたったという感じです。
実際にどうできるかを考えた上での判断が、5月からの変化になったと。他にも食事エリアなどはどうですか?
マリンスタジアムの外のまわりに、食事ができたり休憩ができるエリアを作ります。他にもオーディションのステージなども作ろうかなと思っているのでフェス感は出していけるかなと。
大阪会場も同じですか?
大阪も同じようなスタンスです。今回は東京の「サマーソニック」が大阪に寄った感じがあるかもですね。すべて屋外でということだったり。
コロナ対策などはどういったことを考えていますか?他のフェスだと前方エリア入場をアプリで抽選したり、傘でディスタンスを確保したりと、様々な対策が行われていますが、そのあたりはどうですか?
大阪に関しては、キョードー大阪とやっています。担当者も他のフェスも手掛けていて、仕切りも慣れているので、自治体とも直接やりとりしながら、しっかりとルールを作りながら進めています。東京に関しては、まずはスタジアムでやれるので、椅子もあるし、しっかりと間隔を空けて座ってもらうと。アリーナエリアに関しては、ブロックを分けて、決まった人数を入れる。それは国というより、主催と会場の話し合いにおいて入ってもらう人数を決めています。
あと今年のラインナップをみてもらえば分かるけど、EDMに特化しているというのも大きいんです。なぜかというとDJというのは来日の人数も少ない。バンドだと多くなるし、(ライブ中に)動くし、お客さんも前に行きたくなる。DJはあまり動かないし、お客さんもロックほど前に行かずに、自分たちのスペースでまずは踊りたいわけで、今回の「スーパーソニック」はその方向に寄せた方がいいなと。そういったこともラインナップに関わっています。
それではラインナップの話をしていきたいと思います。以前はスクリレックスの名前が挙がっていましたが、なくなったのはどういった流れなんでしょうか?
スクリレックスはダンス寄りだけど、ロック寄りでもあるしみたいな微妙な立ち位置ですよね。僕らもスクリレックスは呼びたかったし、新曲も「Supersonic」という曲名で(笑)。ただ彼の今の状況は、マネージャーがいなくなって、すべて一人で考えないといけなくて、今年はフェスには出られないという彼自身の判断もあった。そこでスクリレックスがゼッドに変わったという経緯でした。
2日間で11組が発表されていますが、以前名前が挙がっていたビーバドゥービーやトーンズ・アンド・アイは今回出演なしになりましたが、2022年の「サマーソニック」に期待してもいいのでしょうか?
両アーティストとも来年の「サマーソニック」に来たいと言ってくれているし、僕も今のタイミングで絶対見せたいというのはあったけど、来日の人数や今のラインナップとの親和性でいうと、見せ方も微妙になってくるかなと。スティーブ・アオキやカイゴという中に彼女たちを挟むというのは、フェスとしても違うかなという判断でした。ベストな見せ方で来日して欲しいというのもあり、お互い話し合っての結論ですね。「スーパーソニック」に来てもらえなかった人たちが来年の「サマーソニック」に準備していると思ってもらっていいです。半分くらいは来てもらいたいなと。
今後アーティストの追加などは予定していますか?海外のアーティストが中心というのはありつつも、日本のアーティストも?
これから出てきます。1日9~10アーティスト出てもらうので、あと1日4〜5アーティストが追加されると思ってもらっていいです。
その中で海外のアーティストは?
アメリカ、ヨーロッパのアーティスト追加は現状ないかもしれないけれど、ひょっとしたらK-POPはあるかもしれないね。アメリカ、イギリスから来られるのに、韓国からなぜ来られないのって話だし、韓国のアーティストだと「スーパーソニック 」のためだけに来るのではなくて、事前にプロモーションなどをやった上でフェスに出てもらうとかも可能なのでそういった交渉をしています。
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今「スーパーソニック」にラインナップされているアーティストには秋以降ヨーロッパのフェスに出るアーティストもいますが、日本は来られるのか、まだまだ未来がみえないというのも正直あります。
1年半止まっていた海外アーティストの初の来日になるわけで、彼らもフェスに出るとなると1週間くらいスケジュールを押さえないといけない。まだできるのかなという中で、スケジュールを空けてくれるのは日本を愛してくれているアーティストだと思います。
そういった思いも踏まえて、清水さんとしては、去年より実施に向けた手応えはあるんでしょうか?国や行政との進め方など。
まず去年は直接経産省との書類のやり取りとか、そういうことではなかった。まだ日本の感染がそこまで広くなかったことも踏まえて、半分は闇雲にフェスをスタートするんだという自分たちで目標を持ってやっていた感じでした。そのときは入国管理局とのやり取りくらいでビザの問題で一ヶ月半くらい前にギブアップしたんだけど、今回は入国管理局に加えて、経産省ともしっかり進めている。あとは洋楽プロモーター10社で団体として進めようとしている。さまざまなものを含めると手応えは大きいです。
そういった政治的な動きって、音楽シーンが避けてきたというか。
「ロックじゃないよね」という一言で色んなことに目を向けてなかったのはあるよね。
こういう状況下において、そうではいかなくなったと。
それを本当に実感した。自分たちだけだったらそういったものも気にしないでやっちゃえ、やった結果ダメだったってなると思うんだけど、今回はもっと大きいものを背負っているし、洋楽プロモーター全社で、まずは始めないといけない。1年半何も洋楽アーティストを見られずにファンが離れていく状況も含めて、絶対的に変えないといけない使命感で、ただ闇雲にやろうではなくて、しっかりとしたプロセスをとってやるのが重要で、そういった努力も必要だと認識しましたね。
Interview/Text:津田昌太朗
Photo:江藤勇也
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ポッドキャスト配信では、テキストで紹介した「スーパーソニック」の現状に加え、「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」の中止を受けての思い、2022年の「サマーソニック」の展望、さらには旗振り役を務める洋楽プロモーター10社による協力組織インターナショナル・プロモーターズ・アライアンス・ジャパンについての話まで、約40分にわたり語られている。
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