2026年4月に独立行政法人国際交流基金(JF)との共催で運営された「CUEW Showcase & Conference」(以下、CUEW)には、20ヶ国以上から約150名の海外デリゲーツ(音楽業界関係者)が参加した。今回はデリゲーツの中から、カンファレンスに登壇した「DMZ Peace Train Music Festival」の主催者を招き、自身のフェスや「CUEW」について話を伺った。
後半は実際に編集部スタッフが現地参加して得た情報&Tipsをまとめているので、フェスに興味を持った方は記事後半をチェック!
PICK UP:DMZ Peace Train Music Festival
「DMZ Peace Train Music Festival」(以下、DMZ Peace Train)は、2018年にスタートし、毎年6月上旬に朝鮮半島を南北に分断する非武装地帯(DMZ)に程近い鉄原で開催される、平和と融和をテーマにした音楽フェス。毎年スローガンが掲げられ(2026年は「HUMAN ACTIVITY」、2025年は「DANCE, SING, and ENTANGLE!」)、ジャンルや国籍、世代を超えたアーティストが並ぶ。ラインナップの独自性以外にもその雰囲気は唯一無二で、アジアのフェスの中でも独自の進化を遂げている、要注目のフェスだ。
4月に開催された「CUEW」では、主催チームが来日し、主催者のCecilia Soojeong Yiは、「音楽フェスティバルにおける新しい潮流」というセッションにモデレーターとして登場。ダイバーシティや社会的メッセージなど、「フェスは時代を映す鏡」であることを語ってくれた。そんなCecilia Soojeong Yiに「DMZ Peace Train」の今後の展望、「CUEW」やショーケースとの関係についてインタビューを実施した。
INTERVIEW
– 韓国には多くの音楽フェスがありますが、その中で「DMZ Peace Train」のポジションや差別化のポイントはどこにあるとお考えですか?
まず、「DMZ Peace Train」のユニークな点の1つ目は立地です。韓国の多くのフェスは都市部で開催されますが、「DMZ Peace Train」は軍事境界線に近い田舎町で行われます。会場はDMZという、非武装地帯からわずか8kmの場所にあり、歴史的には朝鮮戦争で世界中から集まった多くの若い兵士たちが命を落とした、最も激しい戦場の一つでした。とても意味のある場所であり、今もなお川や山に囲まれた美しい風景が残っていて、私たちのフェスが伝えたいことを肌で感じられる場所です。
2つ目は人々のマインドセットです。私たちのフェスは非商業的でありながら、トレンドに取り残されないよう努めています。ラインナップやデザイン、プロモーションを通じたその他のプログラムで観客を惹きつけていますが、消費者としてではなく、意味のある体験を求めて来場してくれています。それが韓国の他のフェスとの違いを生んでいると思っています。
– 非武装地帯という特別な場所で音楽フェスを開催することに、どのような意味を見出していますか?
「平和」を前面に掲げたフェスティバルをやるからには、会場自体がそれに共鳴するものでなければなりません。立地はフェスのアイデンティティの大きな部分を占めていて、言葉を使わずに来場者に「平和」を感じてもらいたいと考えています。私たちは音楽の力を信じていますし、私たちの会場は伝えたいことを実現するのに最適な場所だと思っています。
– 観客数や来場者層、運営チームの構成などは、フェス開始当初(2018年)からどのように変化してきましたか?
最初は、無料のフェスとしてスタートしました。コロナ禍ですべてが変わりましたが、初回から通い続けてくれている観客が多くいます。これは私たちにとって大切なことで、フェスを始めた当初の精神を失っていないという証です。コロナ後は有料のフェスに転換し、現在は来場者の8割がソウルおよび首都圏在住の20〜35歳の若者で、音楽やカルチャー、アート、ファッションに関心の高い非常にオープンマインドな方々です。残りは地元住民と、無料で来場できる現役兵士の方々です。
また、運営チームも変化しました。当初は組織ではなく、地元のイベント・音楽プランナーの集まりでしたが、現在は全体運営、プログラミング、制作、会場運営、マーケティングを統括するコアディレクター陣に加えて、実行担当や外部パートナー対応のマネージャーがいます。
ショーケースフェスティバルを通じて築かれたネットワークについて
– 今年4月のCUEW登壇の目的と、日本市場への期待をお聞かせください。
日本の音楽には以前から強い関心がありましたが、日本のインディー音楽についてはあまり詳しくなく、ライブを見る機会もありませんでした。そういった意味でも今年のCUEWとSYNCHRONICITYの4日間で素晴らしい日本のアクトを一堂に見ることができ、ブッキングについて話し合える人たちと出会えたことは本当に素晴らしい経験でした。CUEWは日本の音楽業界を理解するための絶好の入り口だと思います。次回はもっと多くの日本のフェスやライブプロモーターの方々と出会い、市場についての知見を共有できればと思っています。
– ショーケースフェスや国際的な関係者とのカンファレンスを通じて生まれたつながりが、実際にラインナップやプログラムに結びついた具体例を教えてください。
いくつもあります。1つ目の例はTENDOUJIで、2019年の「TIMM」(東京国際ミュージック・マーケット)で初めて見ました。とても感銘を受けたのですが、当時はタイミングが合いませんでしたが、ずっと彼らの名前を心に留めていました。そして2025年、日本のアクトが必要になったときに彼らのことを思い出し、ブッキングしました。また、Johnnivanは「Music Lane Okinawa」で見つけたバンドです。GYMVというタイのバンドは、CUEWでのステージを見た後にブッキングしました。アーティストの中にはショーケースに価値を感じない人もいますが、実際には多くの関係者が素晴らしいアーティストを見つけ、自国で紹介したいと熱心に考えています。私も世界中のショーケースで多くのアーティストをブッキングしてきました。
今後の展望について
– 2027年以降、フェスとして取り組みたいことや、ビジョンはありますか?
私たちのビジョンと目標は最初から明確です。非商業的でありながらトレンドに取り残されない、そうすることで音楽を通じて核となるメッセージを観客に届けること。ただ、今年は音楽フェスとして安定した成長段階にあると感じています。これからは、どこまで大きくなれるか、そしてどこまで成長したいのかを見極めて決断していく必要があります。
– CUEW、そして日本の音楽業界の方々やファンの皆さんへメッセージをお願いします。
世界はもっと日本の音楽とそのクリエイティビティを求めています!ぜひ国を飛び出して、私たちと一緒に盛り上がりましょう!
Photo by Sherwin Wong
ショーケースフェスが単なる「見本市」ではなく、アーティストと現場をつなぐ実践的な出会いの場であることを、主催者自身の言葉で語ってくれた。TENDOUJIやJohnnivan、GYMVといった具体的なブッキング事例からも分かるように、一度の出会いが数年越しにラインナップへと結実するケースは決して珍しくない。実際、今回のCUEWをきっかけに新たな交流や具体的な話が生まれている例もすでに複数存在する。ショーケースの意義は、その場で完結するものではなく、時間をかけて実を結んでいくところにこそあるのかもしれない。今後、CUEWから育っていくアーティストやフェス同士のつながりにも、引き続き注目していきたい。
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「CUEW Showcase & Conference」×「SYNCHRONICITY’26」に11組の海外アーティスト出演

