FM802のDJ竹内琢也が音楽業界の気になる人にインタビューする「BEAT EXPO 10-minutes GRAVITY × Festival Life」。第6回目となる今回は、5作目のソロアルバムをリリースした韻シストのBASIさん。アルバムのコンセプトや、20年の活動を通しての変化について語ってもらいました!(interview 2017.5.2)
Festival Life × FM802 BEAT EXPO 10-minutes GRAVITY
vol.06 | BASI(韻シスト) interview by 竹内琢也
-2017年4月5日に、BASIさんの5作目のソロアルバム「LOVEBUM」がリリースになりました。アルバムリリースは2年10ヶ月ぶりだとか。聞かせていただきましたが、本当に最高です。
ありがとうございます。
-2011年からのソロ活動、このアルバムが一つの集大成的な作品になったとお聞きしました。
韻シストでラップを始めて来年で20年目を迎えるんですが、僕自身も来年で40歳になるんです。この”20年目”と”40歳”というのが、自分の中で大きいトピックだなと最近感じていてます。いわゆる折り返しのタイミングですよね。 「これからどうやって音楽とともに年をとるんだろう」とか、「あと何回くらい親と一緒に飯を食えるのかな」というような想像をするようになったんです。そのタイミングで出すソロアルバムというのは、何かを印すものという感覚がありました。そういった周りの要素が作用して、集大成的な作品になったという感じがあります。
-この20年間で、音楽に対する関わり方やスタイルは変わりましたか?
大きく変わりましたね。若い頃は目の前の障害に向かって、怪我をすると分かっていてもガンガン飛びこんでいました。でも今は、「こっちに進めば怪我をするな、だからこっちのルートに行こうか」というように、飛び込む前に少し考える様になりました。 この20年の間に、CharaさんやPushimさん、Kenkenなどいろんなアーティストとコラボしたり、同じステージに立つ中で、そういうふうに変わっていったのかもしれないですね。ステージの上だけではなく、音楽に向き合うスタンスだったり、人とのつながりを大事にするところを見せてもらって、自分が変わった部分はあると思います。
-例えば、Charaさんからはどういう影響を受けましたか?
Charaさんは僕よりもキャリアを多く積み重ねている偉大なアーティストですが、いまだに”愛”というものについて挑み続けているんです。その姿勢を見ていると、自分はまだまだだなと思います。Charaさんがずっと苦悩しながら挑んでいる”愛”とはどういうものなんだろうと思い、ラップというアプローチで着手してみたくなったんです。
-今回のアルバム「LOVEBUM」は、”LOVE(愛)”というワードがアルバムタイトルに入ってますが、”愛”は特にヒップホップではデリケートで、使うのが難しいなと思います。
おっしゃる通りです。でも、それでも表現したくなったんですよ。確かに、僕もヒップホップのMCというのはギンギンに尖っていてハードコアじゃなきゃいけないという考えを持っていましたし、血気盛んな表現を考えてないといけないと思っていました。でもその一方で、いままで避けてきた”愛”を表現してみたいというのもどこかにあったんです。そういうことがあって、自分にミッションを課してみるつもりで、今回の「LOVEBUM」というアルバムを作りました。
-音楽を始めた頃のBASIさんが今回のアルバムを聞いたら、何を感じ、どう思うんでしょう。
重なるところは少ないと思います。当時の自分はまだ偉大なアーティストやレジェンドたちと同じステージに立っていないし、今回のアティテュードを認めないかもしれません。
-この20年、一緒に音楽をやってきた仲間の変化はどうですか?
今回、ほぼ同時期に音楽を始めたAFRAをフィーチャーした曲を収録しています。韻シストのサッコンの次に出会ったヒップホップMCがAFRAなんですよ。出会ってから20年経って、今回のアルバムに参加してくれたということは、結局同じように考え方が変化しているということなのかもしれません。でも、かつてはシーンには圧倒的な母数があったんですが、いまは数がかなり減っていますね。フリースタイルの一つのカルチャーであるMCバトルが特に盛り上がっている状況で、MC自体はたくさんいてもコンスタントにアルバムをリリースしたり、ライブやツアーをしているアーティストは少数です。そういうなかで、AFRAとは同じモチベーションで活動できているからこそ、今回「WINTER」という曲で共演できたんでしょうね。
-「WINTER」の元ネタは、Paris Jones feat. April Kellyの「Winter」ですよね?
おっ、その通りです。さすがですね!
-昔、BASIさんがインタビューでおすすめしているのを見て聴いたんです。
その聞き方は一番コアな聞き方ですね(笑)。実は、僕はああいったインタビューで自分のリスナーに仕掛けているんです。自分のリスナーはきっと追いかけて掘り下げてチェックしてくれるだろうなと思っていて、それをどこか将来作品に入れてシンクロさせるというのを考えていたんです。「LOVEBUM」の中の一つの面白い要素ですね。
-日常にフォーカスするというのは「LOVEBUM」の一つの要素ですか?
改めて自分で聞き直したり、TwitterやInstagramで感想を見ていると、皆さんそう感じてくれているんだなと思います。やっぱり、日常で見たものや触れたもの、友達と会話したことが自分の音楽の全てなんだなと強く感じました。
-BASIさんが韻シストをやりながらソロを始めたきっかけは何だったでしょうか?
韻シストにはサッコンという圧倒的な能力を持ったもう1人のMCがいるので、どうしても韻シストの世界は2MCで作ることになるんです。でも、韻シストをやっていくなかで「1人ではどういう世界が描けるのかな」と感じたんです。1人の世界も作ってみたい、そしてそれを見てもらいたい、聴いてもらいたいという好奇心がきっかけですね。だから、誰かをフィーチャーしてみたいとかは特に考えていません。とにかくBASIというアーティスト、BASIという商品をどんどん研ぎ澄ませていきたいということしか考えていないです。
-それでは、ソロ作品をリリースしながら、バンドスタイルのBASI & THE BASIC BANDを始動させたのはなぜですか?
僕は後にも先にも、韻シスト以外のバンドを組んだことがないんですよ。初めてのバンドが韻シストなんですよね。冒頭でもはなしたとおり”20年目”、”40歳”というのが本当に大きな出来事で、この節目、折り返しのときに、またゼロからバンドを組んでみたいという気持ちがありました。20歳の時とは違う今のBASIがバンドを組んでみたらどうなっていくんだろうという好奇心です。でも、BASIを尖らせるためにソロ活動をスタートして、より尖らせるためにバンドを始めて、また最近「バンドって楽しいな」という気持ちになっているんです。楽しい日々を過ごさせてもらっていますよ。
インタビュー後記 by竹内琢也
BASIさんのアルバム「LOVEBUM」は本当にサイコー!フェスに行くとき、フェスから帰るとき、キャンプサイトでくつろいでいるとき、どこにもぴったりハマるグッドバイブスが詰め込まれています。今年の夏のサウンドトラックに、ぜひ!「夏開きMusic Festival」も本当に楽しみです。
Text by 峯原拓也
interview by 竹内琢也
DATE:2017.5.2
>>BASIC MUSIC: http://basic-music.org/
>>FM802 : https://funky802.com
>>BEAT EXPO : https://funky802.com/expo/
20歳のときにワールドミュージックを紹介する番組でキャリアをスタート。現在はFM802 Monday&Tuesday 19:00~21:00「BEAT EXPO」、Thursday&Friday 5:00~7:00「DASH FIVE!」を担当。選曲、構成、ミキシングを手がけるアメリカンスタイルでもオンエアをしている。BECK、NORAH JONES、CLEAN BANDIT、ALABAMA SHAKES、OWL CITYなど海外アーティストへのインタビューも多数。