台湾発オルタナティヴ・ロックバンド、No Party For Cao Dongインタビュー@中津川 THE SOLAR BUDOKAN

太陽光発電を活用したピースなエネルギーが特色のロックフェス「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2019」。毎年、岐阜県中津川市で9月に行われるこのフェスは、今年2019年も9月28日(土)29日(日)の2日間開催され、3万人を集客した。

当初、雨の天気予報から天候が心配されたが、流石にそこは“太陽のお祭り”。雨どころか2日間とも快晴に恵まれた。また「THE SOLAR BUDOKAN」の魅力は、太陽光発電を活用しているという点だけではない。世代やジャンルを越えて、様々なBANDやアーティストが出演する“音楽の多様性”も大きな特徴の一つ。 若手パンクバンドから、レジェンドアーティストまで、多種多様なラインナップを揃えている。

そんな中、近年は海外アーティストとのコラボレーションにも力を入れていて、今年は、台湾から今アジアで一番注目されているオルタナティヴ・ロック・バンドが出演した。それが草東沒有派對 / No Party For Cao Dong(ノー・パーティー・フォー・ツァオ・ドン)という4ピースのオルタナバンド。一言で例えるなら台湾のナンバーガール的な存在で、台湾では「今、一番チケットが取れない」と言われている20代を中心にカリスマ的な人気を誇るバンドだ。今回はそんなバンドのメンバーである、Sam Yang(b/vo)、Wood Lin(vo/g)、Chu Chu(g/vo)、Fan Tsai(ds)の4人にフェス出演前にインタビューを実施した。

2012年に結成され、2015年より本格活動開始し、台湾のインディーズシーンで最も期待されるバンドとして注目を集めた。2016年に満を持して1stアルバム『醜奴兒』を発表。瞬く間に大きな話題となり、ツアーのチケットは全会場即日完売。これ以降の台湾公演は先述の通りチケット入手困難な状況が続いている。そして、2017年には中華圏最高峰の音楽賞「金曲獎」第28回にて、異例の6項目にノミネートをし、最終的に<最優秀新人賞、最優秀バンド賞、最優秀年度歌曲賞(大風吹)>の3項目を受賞し、中華圏で一大センセーションを巻き起こした。さらにこの金曲賞受賞直後には、「大風吹」「山海」「爛泥」の3曲が、SpotifyでのワールドランキングTOP50以内に同時にランクインし、世界から注目された。

INTERVIEW:No Party For Cao Dong

左から、Sam Yang(b/vo)Fan Tsai(ds)Wood Lin(vo/g)Chu Chu(g/vo)

―いまや台湾のみならずここ日本や欧米でもライブをしたりしていますが、そういう活動は最初から思い描いていたものでしたか?

Sam Yang:いや、当初はインターナショナルな活動ができるとは思ってなくて。

Wood Lin:小さなライブハウスから始めようと思っていただけです。でも2016年をきっかけに、バンドをステップアップするにあたり、ちゃんと真面目にバンド全員で考えていこうと思って。自分たちの慣れているやり方で「次は何をするか」を考えてはいけないと思うようになりました。今のようにワールド・ツアーへ行って、多くの人と出会って新しい選択肢があったときに一生懸命に模索をしてゆっくりと歩き続けた。そうやって今に至った感じですね。

―これだけの規模感で活動を行う根底にある思いは、初めて出会う人に自分たちの音楽を味わってほしいという欲求、その面白みなんでしょうか?

Wood Lin:もちろんそうですし、ファンよりも逆に自分たちの方が学ぶことが多いと思います。さまざまな場所に行って、その場所のファンの人たち、スタッフの方々と関わる中で色々なことを学べていますね。

―地元・台湾と日本、欧米とでは、ライブをする際にはどんな違いを感じますか?

Chu Chu:それぞれの地域というよりも、実はライブハウス自体でみなさん全部違うので、ライブハウスごとの個性や、そこにいるファンの個性を感じ取ってます。

Wood Lin:僕たちも、一つのツアー中で同じセットリストだったとしても、みなさんの反応によって全く違うものを見せられるので、それぞれのハコでの違いは常に感じています。

―国ごとのノリ方とかでいうとどうですか?

Sam Yang:それはだいぶありますね。

Chu Chu:国ごとにそれぞれ盛り上がる場所は違っていて、たとえば場所によっては、横にいる人の盛り上がり方で盛り上がりが変わったりする場合もあるんですけど。

Sam Yang:一番印象に残っているのはドイツですね。

Wood Lin:なぜドイツが一番印象に残ったのかと言うと、曲が突然終わるようなエンディングだと、音が止まった瞬間にすごくハイになって「ウワー!!」っていうからです。本当にすごく印象に残りました。

―そういういろんな国民性やお客さんがいる中で、自分たちをどう見せていくかについて、どんなことを考えていますか?

Wood Lin:一時期は外見的な部分も含めて、すごく気にしたこともあったんです。でも逆に今はみんなフリーな感じで、「どういう風に見せていこう」っていう話し合いとかはせずに、それぞれが好きなように見せていこうという感じです。個人的に一番気をつけているのは、本当の自分たちを出すことですね。

―音や照明の面についてはどうでしょう?

Fan Tsai:そこはかなり気にします。

Wood Lin:世界各地のいろんなアーティストを観ていく中で、やっぱりアーティスト性が高ければ高いほど、細部までこだわりを持っている方が多いですし、大きい場所では特に照明なんかを、もっともっとこだわっていかないといけないと思う。自分たちはそこらへんをすごく気をつけていますね。

―過去に観た中で、特にその辺が優れていた方は?

Sam Yang:トゥー・ドア・シネマ・クラブもそうですし。

一同:テーム・インパラ!

Chu Chu:あとはフルーム。

Fan Tsai:キラーズもそうですね。アーティストの方向性は違うけど、いま挙げたアーティストはすごかった。あとはマック・デマルコも、ステージ上でのファンとのコミュニケーションや掛け合いが上手でしたし、かっこよかったです。

―そういうコミュニケーションを積極的にとっていくライブの形も、目指してはいるんですか?

Wood Lin:これは僕たちが一番すごいところなんですけど……どんなにコミュニケーションをとりたくてもやらないんです。というか、やれない(笑)。

Fan Tsai:すごくフリーズしてしまうことが多くて、逆にファンに助けられてるのが私たちです(笑)。

―なるほど(笑)。過去には「SUMMER SONIC」出演もあったみなさんですが、今回の来日では「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」に出演されます。

Wood Lin:暑ければ暑い方が良いですよね、ソーラーのフェスだから。そうなればどんどんパワーが出てくると思うので。

―まさにそのソーラー電力でやるというのがこのフェスのコンセプトであり、メッセージでもあるんですが、日本だけ出なく世界的にも、気候変動の問題などから環境について考える時期に来ていると思います。そこに何かお考えはありますか?

Wood Lin:普段から多くのことを考えてます。今回はラッキーなことに、直接このフェスに参加することができて、そういう問題を少しでもいろんな人に知ってもらうために、自分たちがアナウンスの手助けをできることが嬉しいです。環境について訴えることをこれだけのフェスの規模までにしているのは、たとえばただ一つのバンドが「環境保護をやります」って言うよりもすごいことだと思いますし、それだけの人員とかスケジュールを調整するだけでも大変ですよね。それについては感謝もしていますし、これからも支持していきたいと思います。

Text:風間大洋
Photo:俵 和彦

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2019

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