神戸新聞との共同企画「フェス主義!祝祭の現在地」では、関西圏で開催されるフェスの主催者や出演アーティストへのインタビューなどを発信します。今回は「サマーソニック大阪」を主催するキョードー関西の上田将聡さんに3年ぶりの大阪開催について、そしてサマソニ大阪の魅力について語ってもらいました。
3年ぶりの大阪開催に向けて
-大阪での開催は3年ぶりになる「サマーソニック」ですが、まずは今年の開催にかける思いをお聞かせください。
2020年はもともとオリンピックの影響で「サマーソニック」は休みにして、代わりに「スーパーソニック」という企画が立ち上がりました。例年の8月ではなく、時期を変えてやろうっていう形で進行していたんですけど、コロナに見舞われて、東京も大阪も中止になりました。
-結局2020年は東阪中止、そして2021年海外のアーティストの国内移動というところで、「スーパーソニック」は大阪公演はなしで、東京公演のみ行われました。
2021年の大阪公演は、まだ海外アーティストの移動のハードルが高くて、大阪公演は実施できませんでした。その年、東京(開催地は千葉市)のスーパーソニックに行ったんですけど、クリーン・バンディットの音が鳴った時、全く違う感覚を覚えましたね。『あ、この感動は久々だな』と。
-当時は1年半以上、洋楽のライブがないという状況でした。
それを西日本、関西のお客さんにも、野外の開放感の中、世界で活躍する洋楽アーティストの音を聴いていただける機会をつくれるっていうのは、非常に夢があるなと。
-チケット販売も好調のようですが、コロナ禍での開催ということで、「サマーソニック」にとって重要な年になると思います。
「音楽フェスティバルが始まる」=「ライブシーンがまた始まっていくぞ」という象徴的なものになっていて、キャパシティに関しても、各フェスが通常になるべく戻そうという動きがあります。ただ、やっぱり、100%今まで通りという感じではないので、客席のレイアウトや感染症対策について状況をみながら判断していますね。
-海外フェスは一気に通常モードに戻ってきていますが、そういった現実をみて日本の今の状況への危機感はありますか?海外アーティストが呼びにくい、フェスの盛り上がりに欠けるといったような。
個人的な感覚ですが、2020年から21年にかけて国内でもおもしろい表現をするアーティストがたくさん出てきました。その半面、ライブの表現の場所がついてきていないと感じることがありました。音源のクオリティとしては世界レベルで戦えるようなものが出てきたけど、表現の方法として、その部分(ライブシーン)がいったんストップしちゃったなっていう事実はあるかなと。そういった意味で、ミュージシャンもお客さんも刺激として、今回の「サマーソニック」を受け取ってもらえたらと思います。
-マスク着用に関しては「ロック・イン・ジャパン」と共同で「外せるところは外そう」という声明がありました。そういった感染症対策を含めた、今年の「サマーソニック」の運営について教えてください。
状況は日々変わっていくので、最終的には公式ホームページのガイドラインをご覧くださいというのが一番適切な表現だと思うんですけど、指針としては、昨年と比較して緩和方向に動いています。主催側はイベントのガイドラインとか、行政のイベントへの要請とか文言を実際に見て、移り変わりも把握しているんですけど、フェスに来るお客さんはこちらが発信する情報しか知らないということも多いので、できるだけ分かりやすい形で伝えていくよう努力しています。
-昨年は一部のフェスが不十分な感染対策によって批判を浴びました。フェス業界全体のイメージ悪化にもつながりました。
いろいろとやりづらくなってしまうのかなとは思いました。でも、この前、サマソニのプロモーションで、芸人の永野さんのYouTubeチャンネルに出てしゃべらせてもらったんですけど、鋭いなということをおっしゃっていて。永野さんはすごく洋楽が好きな、ピュアなファンなんですが、『フェスの現場に対して、リスナーやアーティストの緊張感がちょっとないよね』って。最近はフェスやイベントのサービスとかすごく良くなっているけど、何が起こるか分からない、怖いという感じが『ロックの本来の形じゃない?』と。
イベントの運営をどう守るかはさておき、表現という面では攻めた方がいいんじゃないかと。サマソニも昔はそこらで外国人が酒を飲みまくって、べろべろに酔っ払ってけんかしてみたいなことがあった。それは怖いけど、刺激ではあったなと。今の運営にはそぐわないかもしれないですけど、そういう気持ちも持ちつつ現場をつくっていかないと、刺激的で楽しくて、また行ってみたいよねって思わせるようなイベントにはならないのかなと。
-フェスが一般化、大衆化して、広く受け入れられている一方で、とがった部分が減ってきている?
洋楽フェスってその先駆けだったと思うんですよ。だからそこはなじみすぎずに残していかないといけないところなのかなと。インターナショナルフェスティバルの使命だったりするのかっていうのは思います。現場運営の部分でも、そういう思いを共有しながらやっていたら、たぶんお客さんにも伝わるだろうなと。