ジャンルレスなラインナップに注目!
-今年のイナズマの見どころは?
これまで以上に、もっといろんなジャンルのアーティストが一堂に会するイベントにしようと。僕自身がどこの事務所にも所属せず、長く独立系でやってきたので、たくさんの方とつながりを持てた。その強みを生かさないなんて、もったいないんじゃないかなって。
雷神ステージには、いわゆるロックフェス常連組のUVERworld、04 limited Sazabysからモーニング娘。’22、ももいろクローバーZ、櫻坂46といったアイドル、さらに今年はアイドルマスターSideM(アイドル育成ゲーム)も。そんな中に、大御所の布袋寅泰さんも入ってくる。本当に垣根のないイベントかなと。
−本当にジャンルレスですね。
ジャンルレス(笑)。近年、ロックフェスなんかでも、集客を考えた上で、アイドルを呼んだりすることとか増えてきていると思うんですが、僕たちはそれを一層飛び越えてやろうと思ってます。日本中のどこを探しても、このラインナップの音楽フェスって、見たことのないものになっていると思います。
メインの雷神ステージだけでなく、若手アーティストの登竜門となっている中間規模の風神ステージも、アリーナクラスでも十分に集客できるようなラインアップです。無料で提供するんですが、正直、もったいないくらい(笑)。風神ステージは毎年エントリー制で、期間内にエントリーしてくださいっていうシステムなんです。そして今年は過去最高のエントリ-数で、選ぶのが本当に大変でした。
-今後の展望についてお聞きしたいのですが、以前から、西川さんの丸抱えでは駄目だとおっしゃっていました。
来年がちょうど15周年になるんですね。例えば、出演に関しても、僕がいないと成り立たないようなイベントにはしたくない。日本を代表する音楽イベントに成長してくれるならば、別に僕がずっといる必要はないと思っているんです。何かあった時には僕が矢面に立つし、責任ある状態で関わり続ける。でも、出演し続けることは目的ではない。むしろ、イベントがさらに充実するんであれば、僕が出演しているゾーンはトリも含めて、次のブレイクスルー(躍進)アーティストにぜひともチャンスとして差し出したい。今回はコロナ禍で不確実なスケジュールの中、出演者に無理してもらうのは申し訳ないと思い、僕の稼働をちょっと多くしているんです。でも、本来であれば、がつんと減らしたいぐらいでした。
地域発のフェス、成功の鍵は?
-地方発、アーティスト主催のフェスは全国に多数ありますが、成功の鍵は何でしょうか?
僕も毎年トライアンドエラーの繰り返しなので、偉そうなことを言えた義理じゃないんですが…。ひとつ言えるのは、最近、アーティスト主導型のフェスはどんどん増えていると思うんですが、時期も夏前後に集まりがちだし、ラインナップが似通ったものになりがち。そこをどう独自性を出すかが大事だし、イベントの開催前後を包んだストーリーもすごく必要な気がします。突発的に「フェスやりたいから楽しもう」だと、地域の皆さんとの軋轢も生まれやすいと思います。
来てくださる方だけじゃなくて、支えてくださる方々が、なぜこれをここでやる必要があるのかだったりとか。逆に言うと、イナズマなんかは、僕よりも、それこそ周りの地域の方も含めてなんですが、自分のことのように話してくれるです。地元のおばちゃんが「あんたこれ知ってる?」みたいな。「僕がやってるんで知ってます(笑)」みたいな。でもそういうことがすごくいいなと思ってます。もう僕の手をどんどん離れていってるんですよね。それが嬉しいというか。
-地域にとって必要なものになっている、と。
それこそ、知らないお店が勝手に「イナズマセット作ってるやん!」「イナズマセールやってるやん」みたいな(笑)。「あれこれうちが出してたっけ?関係あるっけ?」みたいなことが起こってるんです。でも、それが僕はめっちゃくちゃ嬉しい。本当にこれを目指していたんですよね。地域のみなさんがお祭りやと思ってくれて、どんどん味方になってくれる人が増えてきてる。その成果が、さっき言っていた「やめんとってや」「今年はやってよ」っていう声になってると思うんです。それはみんなが、そのつもりで準備してくれていたということかなと。そういうことが地域でフェスを続けられるキーになっているのかなと思います。
-コロナ禍もあり、開催が中止・延期になったり、継続的な運営が難しい事例も出てきています。
少子高齢化もあるし、地域に愛情を持ってイベントで盛り上げたいという方がいない地域もある。だから(イナズマ開催で培った)僕のいろんなノウハウを、パッケージにして使えないか。まちづくりの中のイベントみたいなものを、われわれが引き取ってやっていくとか、考えられたらと思っています。「滋賀県で今、僕がやっている活動で、日本中のいろんな課題(解決)をお手伝いできるんじゃないか。滋賀県で起きていることを、ひいては日本のいろんなところで起きている物事につなげていけたらいいなと思っています。
Interview/Text:津田昌太朗
インタビュー協力:神戸新聞
写真:江藤勇也
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本企画は神戸新聞との共同企画で、神戸新聞の紙面、および公式サイト「神戸新聞ネクスト」にて、特集企画「フェス主義!祝祭の現在地」として連載されています。「サマーソニック」「ラッシュボール」など、関西の人気フェスの開催の裏側にスポットライトを当てた記事も掲載中!