フェスシーンを支える裏側にスポットライトを当てる「Behind the Fes」シリーズ。今回は、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「VIVA LA ROCK」など、国内の人気フェスの無料動画配信サービスを行っているGYAO!でフェス配信を仕掛け、公私あわせて年間20以上のフェスに参加するというフェスフリークの上野景大氏に、自身のフェスでのエピソードから現在のGYAO!のフェス配信の取り組み、今後のフェス配信について語ってもらった。
INTERVIEW:GYAO!上野景大氏
-まずは現在のGYAO!での役割を教えていただけますか?
コンテンツビジネス本部という、コンテンツを調達・制作する部門でイベント企画を映像化するセクションにいます。
-その中で上野さんはフェス担当なのでしょうか?
最初からフェス担当というわけではなく、MVやライブ映像など音楽部門のセクションから派生して、フェスなどのイベント専門部隊ができて、今は主にフェスやイベントに関する動画を担当しています。
-公私ともにフェスにはよく行かれるとお聞きしました。
高校生の頃にサマーソニックの映像がテレビで放送されていて、それを録画して擦り切れるほど観たのがフェスに興味を持つきっかけでした。あと友達に借りたAIRJAMのビデオも同じように擦り切れるほど観ましたね。
-念願のフェスデビューはサマーソニックですか?
そうです。初めて行ったのが2003年。当時高校生だったので親に頼んでお小遣いをもらって。ヘッドライナーは、BlurとRadioheadだったんですけど、パンク少年だったのでそこには目もくれずBlink-182、Zebrahead、Sum41を観たのを昨日のことのように覚えています。
-それからずっとフェスに通い続けている感じですか?
しばらくしてから友人に誘われて「朝霧JAM」に行ったんです。キャンプをしたことがなくて、事前知識もなく、私服みたいな格好で行ってとても過酷だったのですが、そこから野外フェスにハマってしまって。大学を卒業する前にお金を貯めて、「FUJI ROCK FESTIVAL」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL」にも遊びにいったりとフェス三昧の学生生活でした。社会人になってからもそれが続いて、公私含め年間20フェスくらいは参加しています。
-フェス三昧の生活の中で思い出に残っているエピソードはありますか?
個人的なベストアクトは、2004年サマソニで見たGreen Day。当時一番好きなバンドだったんですけど、その直前に当時付き合ってた彼女にフラれてて消沈していたときに、「Good Riddance (Time Of Your Life)」という曲で感極まって号泣しました(笑)。あと最近の話なんですが、フェスでプロポーズして結婚することになったりとか。フェスは本当に生活の一部みたいな感じですね。あと念願叶って参加できた「AIR JAM 2011」の光景は本当に忘れられません。
-そして仕事でもフェスに関わるようになったと。
音楽とインターネットが好きだったんで就職活動を経てYahoo! JAPANで働くことになりました。入社当時から「音楽」を仕事として携わってみたいと思っていたんですけど、当時の部署は音楽関係ではなかったので、趣味として音楽やフェスを楽しんでいました。
-いつからGYAO!に移って音楽やフェスに携わるようになったのですか?
今から4年前にGYAO!に移ってからですね。その頃にアメトーーク!で「フェス芸人」が放送されたと思うんですけど、「フェス」っていうワードが一般化されてきたころでした。そういった市場も踏まえて異動したGYAO!で、フェスに関連した仕事ができないかなと考えるようになりました。
自分がフェスに興味をもつきっかけが、サマーソニックとAIRJAMの映像だったので。
-そういった自分の原体験を新しい世代に経験してほしいと?
はじめはそんな大きなことは考えていなくて、好きなことを仕事にしたいという感じだったのですが、フェスの映像に感銘を受けたというのは事実なので、同じ体験をしてくれる人がいればいいなと思っています。
-そうした中で、自分のやりたいこと=フェスをGYAO!でやるにあたって、どのように取り組みがはじまったのですか?
自分がGYAO!に移ってから、2015年は構想段階、2016年にスタートしました。市場の定量的なデータはもちろん、体感としてもSNSやニュースでフェスが盛り上がってきている印象を感じていました。「この流れを映像化、無料配信したら盛り上がるのではないか」という発想でこのチャレンジが始まりました。
-具体的にはどのフェスとの取り組みからスタートしたのですか?
まずはロッキング・オン・ジャパンが主催している「JAPAN JAM BEACH」(現在はJAPAN JAMとして開催)からこのチャレンジが始まりました。
-ちょうどアメリカで開催される「コーチェラ」などの配信も盛り上がってきたころだったかと思います。
そうですね。海外ではフェス動画配信が当たり前になってきていて、SNSなどで大きく盛り上がりを見せていたので、日本でもこういうのをやりたいと感じるようになったのがきっかけです。実際に「JAPAN JAM BEACH」は「コーチェラ」を参考に、生配信で3ステージをチャンネルに分けて無料配信するなど、結構チャレンジングなことをやらせてもらいました。
-「JAPAN JAM BEACH」以降、他のフェスにも拡大していきました。
「JAPAN JAM BEACH」が終わっていい反響があったので、年末の「COUNTDOWN JAPAN」の無料配信もやらせていただくことになりました。「JAPAN JAM BEACH」のときに、ユーザーの声として「生配信だとその時にしか見られない」というものが多数ありました。GYAO!がこれまでビデオ・オン・デマンドに力を入れてきたこともあり、「COUNTDOWN JAPAN 16/17」では「翌日出し」という手法を初めて取り入れたところ、反響がとても良かったんです。これがきっかけで、翌年の2017年はロッキング・オン・ジャパン主催の「JAPAN JAM」、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「COUNTDOWN JAPAN」で「翌日出し」の無料配信をさせてもらえることになり、実績を残すことができました。