2022年より、山梨県北杜市小淵沢「女神の森」に場所を移し、「ワンダーラスト-はじまりの庭-」をテーマに開催される「ハイライフ八ヶ岳」。かつて米国の牧師と地域の人々によって開拓されたこの土地は、今また新たに移住する人も増えており、食文化はもちろん、暮らしのさまざまな要素を楽しむスピリットが感じられる場所。
今回は、まさに自身も移住者のひとりであり、VJ/Web Producerとして活躍しながら、ハイライフ八ヶ岳のクリエイティブディレクターも務める宮沢喬(ミッチェ)さんと、過去にもハイライフ出演歴があり、今回はハナレグミとのユニット・タカシタブラカシでの出演となるミュージシャンのU-zhaan(ユザーン)さんの対談が実現!
今年のハイライフと縁のある場所、東京・下北沢 発酵デパートメントにて、お二人の出会いから、今年のフェスのテーマのひとつである「発酵」、グルメな二人によるフェス飯トーク、そしてタカシタブラカシとしての出演について、旧知の仲であるふたりに、ハイライフの旨みを語ってもらいました。
思いがけず移住した先でフェスに関わることに
ミッチェ: 僕はウェブサイト制作の仕事をしているんですけど、ユザーンさんのサイトに僕が関わりだしたのって2010年でしたっけ。
ユザーン: そうだね、かなり長い付き合いになるね。なにしろ、10年前に貸したお金がまだ返ってきていないぐらいだから。
ミッチェ: あ……! 全然忘れてないですよ、30,000円! 今日たぶん返せます。
ユザーン: いつでもいいよ、覚えててくれてるだけマシだよ(笑)。ところでミッチェは、いつの間にハイライフの主催チームみたいになったの? 前はそんな立ち位置じゃなかったよね。
ミッチェ: なんでだろう? そんなに自覚のないまま「よろしくね」って言われて、今年はアーティストのブッキングも20組以上やることになっていて。
ユザーン: 北杜市に引っ越してきてからまだ数年しか経ってないでしょ?
ミッチェ: 東京から移住して、今年で7年目かな。
ユザーン: 7年で、こんな大きなフェスの主催チームに入ってるなんてすごいよね。もうすっかり地元の顔じゃん。
ミッチェ: いや全然そんなことないですって。でも、まさかこんなふうになるとは思ってもいなかった。初回のハイライフは普通にお客さんとして遊びにきてましたからね。ROVOの勝井祐二さんからの「ミッチェの家の近くでフェスやってるよ!」っていう連絡で開催を知って。
ユザーン: 今やそれを中核で取り仕切ってるんだもんね。でもミッチェは北杜市に引っ越す前から「山梨を盛り上げて行きたいんですよねー」って話してたよ。
ミッチェ: 言ってたかな? あ、家を建てているときか。そのころから、もう山梨を本格的に好きになっちゃってたんでしょうね。まあ、おばあちゃんの家が小淵沢にあってよく遊びに来てたし、もともと地元みたいな感覚があったのかもしれない。
ユザーン: そして、なんか今本当に山梨は盛り上がってるらしいね。東京近郊から北杜市へ移住した人って俺の友達にもいっぱいいるし。
ミッチェ: 盛り上がっているのかどうか自分では客観的にはわからないけど、個人的には山梨での暮らしがすごく気にいってます。いろんな人がいて面白いなあ、いいなあって。東京で暮らしてるころは、自分はすごく狭い世界にいるなとずっと感じてて。僕はVJもやってるのでミュージシャンと一緒に遊ぶことは時々ありましたけど、基本的にはウェブサイト制作が仕事なんで、やっぱり同じような業種の人に会う機会しかなかったんですよ。でも山梨に来たら大工さんとか美容師さん、味噌屋さんなどいろいろなジャンルの人たちと出会えるようになりました。多種多様な人がいらっしゃるので、これまでそんなに関わる機会のなかった70~80歳くらいの方とも話せるようになったり。
今年のテーマのひとつは「発酵」~おいしい食べ物に出会うこと
ミッチェ: 僕がこっちに来てから知った面白いところをたくさん紹介したいのでユザーンさんには山梨にいっぱい来てもらおうっていつも思ってて、これまでにも色々な企画に声をかけてました。2022年の春には、インド古典音楽のライブとベンガル料理がセットになっているイベントを甲府の桜座でやりましたよね。
ユザーン: あれ、めちゃくちゃ大変だったね。ライブの前日に100人分のベンガル料理を仕込むのは無茶だってことを知った。まあ、ほとんど全てをシタール奏者の石濱匡雄さんがやってくれてたけど。
ミッチェ: みんなで前日からジャガイモを刻んだりするの、めちゃくちゃ楽しかったですけどね。なんなら僕はずっとああいうことをやっていたい!
ユザーン: きっともうウェブデザイナー業に疲れてきてるんだよ(笑)。そういえば、あのカレーイベントは今回のハイライフにも来る “発酵兄妹” がプロデュースする「こうふはっこうマルシェ」の関連イベントだったんでしょ? ハイライフも「発酵」をテーマにするって聞いたけど。
ミッチェ: ハイライフは今年で6年目の開催なんですが、いつもビールやワインやパンの出店が多かったんですよね。その辺りをひとつのキーワードで括ると「発酵」なのかなというのがあって、今回のハイライフではテーマのひとつにしてみました。
ユザーン: (フライヤーを見ながら)この「発酵サーカス」ってのはどんな企画なの?
ミッチェ: 明治元年に甲府で創業した五味醤油の6代目・仁さんと妹の洋子さん、それに下北沢の発酵デパートメントの小倉ヒラクさんという3人で結成されたユニット “発酵兄妹” にプロデュースしてもらってるエリアです。発酵関連の出店と、ベーカリーやワインバーをやっている人とか醸造家さんなどにトークをお願いするステージを作る予定。あと、勝井祐二さんがバイオリンのソロで出演してくれそうです。
ユザーン: え、勝井さんってすでに両日とも出演が決まってるんでしょ。ここにも出るの?
ミッチェ: いや、二日間のうちの一方がここになったの。もともと発酵サーカスでは音楽プログラムは予定してなかったんだけど、勝井さんが「そこで演奏してみたいなあ」と。発酵をテーマに演奏してくださるみたいです。どんな音楽になるのか僕には全然想像がつかないけど。
ユザーン: 勝井さん本人にも想像がついてないかもしれないよ(笑)。
ミッチェ: ちなみにユザーンさんは土曜日(9/10)は出られないんですよね?
ユザーン: 土曜はちょっと行けないんだよね。ていうか、2日間のフェスで2日とも出演する人ってあんまりいないよ。
ミッチェ: 勝井さん基準で考えちゃいけないんだ(笑)。勝井さんは前日の夜に来て、たぶん最後まで残ってくれるから合計4日間いるんじゃないかな?
ユザーン: 勝井さんはハイライフが大好きだもんね。
ミッチェ: ユザーンさんは勝井さんともライブをいっぱいやってますよね?
ユザーン: そうだね、一番多く共演してるミュージシャンかもしれない。
ミッチェ: 僕は、勝井さんとユザーンさんがツアーに行ったときの話を聞くのがすごく好きで。たいてい、どこかの街で食べたおいしいものの話になるんですよね。
ユザーン: ツアー先での食事って、やっぱり一番の楽しみだからね。でも最近は、なんかどこに行ってもカレーが準備されてるから地域独特の食べ物みたいなのに巡り合える機会が減っちゃって。
ミッチェ: カレーしか食べられないと思われてるんじゃないですか?
ユザーン: そうなのかもね。お昼ごはんは何を食べようか、ってインターネットとか見ながら考えて行っても、ライブに呼んでくれた人が「カレー作りが得意な青年が初めてチャレンジした南インドカレー」みたいなのを用意してくれちゃうの。もちろんありがたいんだけどね。
ミッチェ: あはは。しかもユザーンさんは、食べたら絶対「おいしい」って言ってくれるから。
ユザーン: だってさ、せっかく出してくれたカレーに「これ、玉ねぎの火入れが決定的に足りてないですね」とか言える?
ミッチェ: 言えない(笑)。とりあえず絶賛しますね。
ミッチェ: 前回ユザーンさんが山梨に来てくれた時は、パンがすごくうまいって言って下さって。
ユザーン: あー、パンおいしかったね。でもそういえば、そのパンも結局カレーと一緒に食べたよ。
ミッチェ: 確かに、出演者用の食事がカレーだった! カレーは嫌ですか?
ユザーン:嫌ではないし、むしろ好きだよ。今までハイライフに3回出演して、3回ともケータリングがカレーだったけどおいしく食べたよ。
ミッチェ: じゃあ今年もカレーでいいですかね。でも北杜市にはおいしいパン屋さんがすごく多いので、ライブの日にはとっておきのパンもユザーンさんのために用意しておきます。
ユザーン: いいよ、主催者にはもっと他にやらなきゃいけないことがいっぱいあると思うし。
ミッチェ: そりゃそうですね(笑)。ところで、他のフェスのケータリングってどんな感じですか? ライジングサンとかはすごいって聞きますけど。
ユザーン: ライジングのバックステージでおいしいジンギスカンを焼けるのは有名だもんね。最近はどのフェスも食事が充実してきてるよ。その中でもFRUEとかFUJI&SUNとかは、ご飯を食べるためにあそこへ行きたいぐらいのレベル。
ミッチェ: そういうのすごくうらやましいなって思うので、ハイライフも頑張りたいです。
ユザーン: バックステージのケータリングを充実させるのもありがたいけど、やっぱり客席側のフードコートが華やかなのが一番うれしいけどね。みんなが食べてるおいしそうなのを、普通に並んで買いたいよ。
ミッチェ: ですよね! 今年は、山梨県内の出店者の方にかなり力を入れて集まっていただいています。
ユザーン: えー、買いに行きたいなー。でも、最近は感染症のせいで会場内を散策しにくいところもあって、なかなかフェスで自由に行動できなかったんだよね。僕なんかだとそれほどはないけど、たまに「握手してください」とか声をかけてくれる人がいたりするじゃん? その時に、自分がいろんな人と握手をしたことによりウイルスの媒介元になる可能性みたいなことに逡巡しちゃう瞬間があったりして。
ミッチェ: そうか。じゃあ今年は僕がボディーガードとして付いて行きますよ。「ユザーンさん通りますから! あけてくださーい!」って。
ユザーン: いや、それは相当マイナスプロモーションだからやめてくれるかな。「ユザーンのくせにいい気になってる」って思われたくない(笑)。
ミッチェ: まあ、なかなか自由に出歩きにくいタイミングなのはわかります。ハイライフも、のびのび楽しんでもらいたいとは思いつつも、主催としては感染対策について緩めるつもりはないですし。だけどその上で、みんなに楽しんでもらいたいと心から思ってるんですよね。
ユザーン: 大丈夫だよ。みんなきっと楽しんでくれるはず。野外で、そして大音量で素敵な音楽を聴いたら、それだけでびっくりするほど楽しいよ。
ミッチェ: たしかに! 僕もコロナの影響でしばらく現場がなかったあと、ROVOのライブVJとして久しぶりにライブフォレストっていう野外フェスへ行って、リハーサルの音を聴いた瞬間に「あ、これだな」って感じて。だからといって無理に誘うとかではないのですが、「もしよかったらおいでよ」「おもしろいことやっているよ」っていう気配はそこはかとなく漂わせておきたいなって思っていますね。